(#1より続く)
失礼ながらほんわかタイプに見える川崎フロンターレのリーダー、鬼木達(とおる)監督。
試合中にエキサイトするシーンも、オーバーアクションも特にない。かといって、睨みを利かせて気難しそうに試合を眺めているわけでもない。
試合前に「猪木ボンバイエ」ならぬ「鬼木ボンバイエ」がサポーター席から上がるなど、ちょっといじられキャラでもあるような……。
フロンターレのホームゲームはいつも企画満載。老若男女、子供連れとアットホームな笑顔が溢れる場内の雰囲気は何とな~く鬼木監督のキャラともマッチする。
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いろんなことを気にしすぎないように
――あんまり感情を表に出すタイプには見えません。
「現役時代は結構、感情の起伏が激しかったんですけどね、結婚してから年を重ねるごとにどんどん落ち着いていったというか……。でも選手に対してもハッキリ言うときは言うし、怒るときは怒りますよ」
――監督業はストレスもかなり多いと思うのですが。
「自分ではネガティブ志向だと思っていたんですけど、最近はちょっとポジティブになりつつあって。ストレスチェックをしてみたら、全然なかったんです。分析とか試合のことを考えて寝ちゃいけないと思っていても、寝てしまったりとか、ハハハ。まあ、いろんなことをあまり気にしすぎないようにはしています」
――鬼木さんは座右の銘とかあります?
「これがないんですよ。ただ、自分自身を見失わないということは気をつけています」
――関塚隆監督、高畠勉監督、相馬直樹監督、風間八宏監督のもとでトップチームのコーチを7年間、務めました。コーチ経験が活かされているなって感じるところは?
「声の掛け方というのは凄く勉強になったと思います。ああ言ったら良く伝わるんだなとか、逆に伝わらないんだなとか。やっぱりコーチなんで、選手の反応がダイレクトに入ってくるんですよ。このタイミングで監督がネガティブな話をすると、選手もネガティブになっちゃうんだな、とか。逆に監督がネガティブな状況でポジティブな話をしても、選手から『今の試合内容で本当に悪くないんですか?』と聞かれたこともあって、コーチの自分が監督の言葉を補足したりとか。だから自分の気持ちに嘘偽りなく、本気になって伝えるというのは、コーチをやってきたからこそ学べたことだとは思います」
「これやっといて」より「何かやっといて」のほうが効く
――コ―チ経験が長いから、自分のもとで働くコーチの気持ちも分かるんじゃないですか。
「『これやっといて』と『何かやっといて』では違うと思うんです。『これ』だと限定されるけど『何か』であれば、コーチもいろいろと考えるし、信頼されているんだなって思える。任されると僕もコーチ時代に嬉しかったし、力も発揮できるというか。だから『何かやっといて』でやれればいい。スカウティングやフィジカルなど専門的なコーチが入ってくれて、コミュニケーションを取りながらやっています。基本的にはできる人に任せたいというのはありますね」
――コ―チ陣に対して何か気をつかっているところは?
「監督室で相手の映像を見たり、考えたりして遅くなってしまうことがあるんです。僕がクラブハウスにいると、コーチもなかなか先には帰れないじゃないですか。長くなりそうなときは『先に帰ってね』って声を掛けておきます」