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歌舞伎町の黒服を経て“辞めさせ屋”に……開成卒の30歳起業家が明かす「退職代行ビジネスの裏側」

名門校のアウトロー卒業生――岡崎雄一郎 #2

2020/05/30
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「正直、特に思い入れがあるわけでもないんです」

「退職代行に関しては、正直、特に思い入れがあるわけでもないんです。アイデアも僕のものじゃないですから。一緒にやってる新野が以前、『会社を辞めづらい』みたいな話を彼の実体験として語っていて、それならもしかしたら、という感じで始めたので。そのときは、実はお金が入ってくればなんでもよかったんです」

 

 会社を辞めたいけど、上司には切り出しづらい……。そんな思いを抱える全国の会社員たちから、今では毎月約300件の依頼があるのだという。法律上、退職の意思は本人が直接、書面などを通して会社に伝える必要があるが、それ以外の細々とした事務手続きは全てEXITが間に入ってやりとりしてくれる。退職を決意した本人からすれば、同僚や上司、人事部の担当者から「なんで辞めるんだ」「せめて年度末まではいてくれ」などと煩わしい言葉をかけられることなく、すっきり会社を辞められるわけだ。

「『会社を辞められない』とずっと悩んでいるくらいなら、退職代行でも使ってサッと辞めちゃったほうがいい。そういうスタンスでこの仕事をしています。辞められないことで、心を病んだり、自殺したりする人もいるわけなので」

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“辞めさせ屋”のニーズはどこにあるのか?

 だが、岡崎自身は、そもそも「会社を辞められない」という悩み自体、実は理解できないのだという。

「法律上も圧倒的に労働者が有利なわけで、それぐらいはちょっと調べれば出てくるんです。本人が退職の意思を示せば、2週間後には辞められる。上司を説得する必要はないし、退職すると言った人を会社が引き止めることもできないんです。別に鎖に繋がれているわけでもないんだから、嫌なら行かなければいい。それでも、辞めたいと言い出せなくて悩む人たちがいるんですよね」

 

 のちにEXITの共同創業者となる新野とビジネスのアイデアを出し合っていたとき、新野が「退職を代行してくれるところがあれば、20万円まで出す」と言った。それを聞いて岡崎は「アホだなあと思いながらも、確かにそういう人はいるのかもしれないな、と」。