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「開成に通いながらタトゥーを入れました」異端のベンチャー社長が振り返る“名門男子校で味わった洗礼”

「開成に通いながらタトゥーを入れました」異端のベンチャー社長が振り返る“名門男子校で味わった洗礼”

名門校のアウトロー卒業生――岡崎雄一郎 #1

2020/05/30
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 振り返ってみれば、人生の中でたった6年間に過ぎない日々。名門中高卒の肩書き、それは勲章だろうか、それとも烙印だろうか。

 今ではもう、あの制服も校章も身につけることはない。卒業後、名門校のブランドを剥がされ、生身で勝負する人生。その中でもがきながら、同級生たちからは遅れて、あるいは離れて、社会に「居場所」を見つけた“アウトロー”たちがいる。

 それは親や先生たちが期待していたような進路ではなかったかもしれない。だが、彼らが放つ規格外の魅力こそが、名門校の懐の深さを示しているようにも感じる。――そんな“アウトロー卒業生”に話を聞いた。(全2回の1回目/後編に続く

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◆◆◆

 ジョジョが来た。岡崎雄一郎は、全身を派手な星柄のドルチェ&ガッバーナに包み、取材会場のドアを開けて入ってきた。それは先日、ドルガバの試着室で「完全にジョジョ(の奇妙な冒険)」とツイートしていた服ですよねと指摘すると、照れを隠すように「あ、そうです」と素っ気ない返事をした。

 現在30歳の岡崎は、いわゆる「男子御三家」の一つ、東大合格者数39年連続1位の開成中学校・高等学校を卒業した。だが、そこからの経歴が“アウトロー”だ。まずは米国の大学へ留学するも、中退。帰国後は解体工、型枠大工、歌舞伎町の黒服として働いたのち、小学校時代からの友人とともに退職代行を手掛ける「EXIT株式会社」を創業した。会社に不満があるのに辞められない、そんな悩める会社員たちの退職手続きを代行する新たなビジネスだ。

 一時期はプロボクサーを目指していたことがあるとか、首にまでタトゥーが入っているとの事前情報から、どんな闇を背負った刺青男が登場するのかと覚悟していた取材チームは、肩で風を切るでもない、シャイでマナーの良い好青年を目の前にして、新鮮な驚きを隠せなかった。

開成中学校・高等学校 ©文藝春秋

 だが、口を開くと曲者の片鱗が見え隠れし始めた。「自分でも小さい頃からぼちぼちイケメンだと思ってるんですけど、なかなか僕がイケメンだというイメージが世間に広がっていかないなと。そうは言っても、イケメンを売りにしていけるほどのレベルではないとも思ってます」。それは謙虚なふりなのか、傲慢なふりなのか。どちらにせよ、一筋縄ではいかなそうだ。

「弟と最後に話したのが中学生ぐらい」

 神奈川県鎌倉市で育ったという岡崎に、まず家族についてきいてみると、「付き合いは薄いんですよ」と軽く突き放したような構えを見せた。「1歳下の弟が1人いるんですけど、最後に話したのが中学生ぐらい。僕、彼が何をしてるか全然知らなくて。あんまり気が合わなかったみたいです」と、他人事のように語る。