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「開成に通いながらタトゥーを入れました」異端のベンチャー社長が振り返る“名門男子校で味わった洗礼”

「開成に通いながらタトゥーを入れました」異端のベンチャー社長が振り返る“名門男子校で味わった洗礼”

名門校のアウトロー卒業生――岡崎雄一郎 #1

2020/05/30
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志望校は「東大→慶應→アメリカ」

 一方で、大学受験は迫っていた。学内試験では結果を出せていなかった岡崎も、高1の終わりぐらいまでは「東大なんて普通に余裕だ」と思っていた。「全力を出せば全然追いつけるでしょ、と。でも高2に入った頃から、いや、ちょっと待てよと」。東大の受験科目数はかなり多い。「全部やるのはさすがにきついなと思って、志望校を変えて、慶應法学部に行こうと思ったんです。英語と世界史と小論文、3つだけ。これなら余裕だろうと(笑)」

 だが、岡崎は世界史が苦手で、模試では「7点とか14点」を叩き出してしまった。そんなとき、留学の話を見つけたのだ。「現実問題、あのまま行ったら慶應法学部は難しかったと思うんですけど、ただ、アメリカに行くと決めたのはその道が厳しかったからというよりも、何か面白そうだったからです」。初めてその考えを親に話した時は、「何を言ってる、ふざけるな」と叱られた。

 

「でも、自分の中ではもう、行くことが決まってたんで。そこからはひたすら、英語をやるようになって。中高を通して初めて真剣に勉強をしたのが、そのときだったかもしれないです。英語も全校模試でビリみたいな感じだったんですけど、めっちゃやったら、英語だけは上位50人までの順位表に載って、校内に貼り出されるぐらいになったんです。たしか、48位か49位ぐらい。他の教師は爆笑だったみたいですけどね、岡崎載ったよって。でも、それで親に僕の熱意が伝わったんだと思うんです」

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人生で初めて本気になった瞬間

 今でこそ、ハーバードなどの海外名門大学へ進む生徒も増えてきた開成ではあるが、当時はアメリカへ行くなんていう生徒は、“変わり者”の岡崎くらいだった。海外大学への進学を斡旋してくれる団体に費用を払い、岡崎はとにかく英語を勉強し続けた。一旦は語学留学という形で現地へ飛び、半年ほど州立大学付属の語学学校でTOEFLの点数を伸ばして、大学へ編入するというコース。受け入れてくれた大学は、テキサス州立大だ。

「別にテキサスに行きたかったわけではなかったんです。でも、あっちの大学入学には高校の成績が要るんですが、開成と言ったって向こうの人にしてみたら知ったこっちゃねえやという感じで。学校のランクはほとんど考慮されずに、単純に高校での成績が低いと、行けるところが限られてしまったんです。本当はカッコいいからカリフォルニアがよかったんですけどね」

 中学受験にも高校の部活にも熱中することのなかった岡崎が、人生で初めて「本気」になった瞬間。それがこのときだったのかもしれない。しかし、そうしてテキサスで大学生活を始めた岡崎だったが、結局は卒業に至ることなく中退してしまう。その原因は、現地で出会い、学生生活を破綻させるまでにのめりこんだボクシングだった。

 

後編に続く

写真=松本輝一/文藝春秋

岡崎雄一郎(おかざき・ゆういちろう)
1989年生まれ。退職代行を手掛ける「EXIT株式会社」代表取締役社長。私立開成高校を卒業後、アメリカに留学。テキサス州立大学へ入学するも、ボクシングに熱中して中退。帰国後は解体工、型枠大工、歌舞伎町での勤務を経て、現職。Twitter(@okazakithe)でも情報発信中。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

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