中学ぐらいから、誰かがどこかの学校の女子と付き合ってるらしいといった話を聞くことはあったものの、岡崎は「女子校の文化祭に行って、アドレスの交換ぐらいまではやってみたりしてましたけど、女子に免疫がなくて圧倒的に経験値不足だった」と笑う。「でも、高校の間に一応彼女はできたので、男前として最低限のレベルはクリアできたのかなと思います」
担任から言われた“忘れられない言葉”
のどかな学校生活のようにも聞こえるが、多感な少年たちにとっては概して、自分に起こる一つ一つの出来事が“地味に大事件”だ。「高校の頃は遅刻がすごく多かったですね。家が遠かったんで、眠いんですよ。大船から電車に乗って、座って寝て、本当は西日暮里で降りるんですけど、そのまま埼玉まで行ってしまって。それで、埼玉でぷらっと散歩をしてから、学校に行くみたいな感じでした。早く着いても午前中は寝てるみたいな」
日々、ただ確信犯的に埼玉まで乗り過ごすのではなく、そこで降りてぷらっと散歩をする。当然遅刻するが、それでも学校には行く。思春期のそんな、自分でも言葉にできない心理と行動に対して、開成の先生たちはうるさく言うことはなかった。
「先生の機嫌が悪いときは何か言われたりしますけど、ほぼほぼ、いつも寝てるんで、いいよあいつは、って感じだったと思います。担任の先生にはすごくよくしてもらったんですけど、特に高3の担任のことは記憶に残っていますね。僕、レゲエミュージシャンのショーン・ポールが好きで、どうしても一度やってみたくて、一時期コーンロウという髪型にしたことがあったんです」
開成は茶髪もピアスもOKの、自由な校風だ。でもさすがにレゲエ風に編み込んだ長髪と刈り上げを組み合わせたコーンロウは、校内でも相当目立っただろう。ただ、他クラスの先生たちが色々と言う中で、担任の先生だけは「まあ、別に俺はいいと思うんだけどなあ」と声をかけてくれた。「それが嬉しかったというか……さすがだなと思ったんです」
なぜ高3の夏にタトゥーを入れたのか?
そして高3の夏、岡崎は「家族にはもちろん内緒で」腰にタトゥーを入れた。日本トップの名門校に通いながら、なぜタトゥーを入れたのか。しかし、そこに私たちが想像するような強烈なトラウマやコンプレックスは存在しない。岡崎にとっては、高校生にして身体にタトゥーを刻むことすら、日常の延長線上だったようだ。
「高1のときに本屋でタトゥーアートの本を読んで、カッコいいなって思ったんです。で、高3のときに入れようかと。でも普通のタトゥースタジオって、20歳未満は親の同意書が必要なところが多いので、18歳の高校生でもできるところを探して、入れてもらったという感じです。3から5万円ぐらいかな。当時、バイトとかはしてなかったんで、親の小遣いで彫りました」
彫り師には我慢強いほうだと褒められたが、それでもやっぱり痛かったという。