1ページ目から読む
4/4ページ目

セクハラ発言処理に賛否両論

「松本さんが干されますように!!!」

 これは放送後の指原さんのツイートです。セクハラ発言のガチな追及ではなく、芸能的な茶番でこの騒動を終わらせたのでした。

指原さん、2019年1月15日のツイート

「この発言はどういう意味ですか?」ではなく「もう、怒ってるんだからね!」というやつ。松本さんは救われ、指原さんは度量のデカさを見せつけられる。実際にこのツイートの後は「さすが、指原!」と絶賛するコメント大量発生、指原さんの株は爆上がりしました。

ADVERTISEMENT

 世間的には大成功に見えたこの手打ち。でも今思えば、この辺りから如何ともしがたい「ズレ」は起こっていたのかもしれない。「セクハラを笑いで処理する懐の深さ」が称賛される現状に、うんざりしている女性(男性)がいて、そして徐々に世の中は「嫌なものは嫌」と表明する方向に傾きつつあるということ。

EXIT兼近さんが指原ポジションに……

 さて、こちらは例の『ワイドナショー』で、指原さんと同じ質問を振られたEXITのカネチこと兼近大樹さんのコメントです。

「だいぶむずいんですけど、勉強しないと参加したらいけないっていうのが政治っていうわけじゃなくて、誰でも発言する、批判することって自由だと思うんですよね。それを大人たちが都合悪いから、若者は参加するだけで叩かれたりとか。芸能人なんて特に影響力あるから言わないでくださいとか言われるんですけど、そんなの影響力を持ったのは自分で持ったもので、自分の思うことを発言するのは本当に自由だと思うので」

「俺が一番残念なのはこれできゃりーぱみゅぱみゅさんがツイートして、それを叩かれてそれを見た若者たちが『あ、やっぱり政治に参加したらこういう嫌な思いするんだな』『大人からこういうこと言われるんだな』っていうので衰退していくのが、一番なんかダルいっすね」

EXIT兼近大樹さん ©文藝春秋

「大物」や「権力者」の中で、指原さんは主に「家庭内野党」のような役割を果たしていたのだと思います。率直な物言いをする指原さんは従順な僕より刺激的で、だけど決して自分を「食う」ようなことはしない安心感もある。この放送で言えば、指原さんはこのカネチ的なポジションだったのではないかと思うのです。若者の率直な意見で大物たちを「おお」と言わせる役。時代の流れ、ネットの流れを敏感にキャッチして自分のものにする、そして「チャラいけど、物事の本質ついてる」と周囲を唸らせるのが彼女の真骨頂だったのではと。それをあっさりとカネチに取って代わられてしまった。

 それは指原さん自身が「大物」「権力者」になった故のズレなのか、テレビ的な「正解」が必ずしも世間の「正解」ではなくなった、我々受け取る側の「変化」なのか。

 しかし一つ言えることは、今日本全体が「賢く振る舞い疲れ」みたいなものに覆われていること。「正しくあれ」「賢くあれ」という圧力、言い換えれば「正解」以外は発してはならないというような圧力に対して、人々が思いも寄らないような拒否反応を示し始めてるということ、でしょうか。指原さんはあの発言で大きなミスは犯さなかった。しかし彼女が一番大事にしてきたであろう「世間の風向きを読む」ことに関しては、少々ミスを犯してしまったのかな……と思います。