新型コロナウイルス(以下、コロナ)感染拡大防止のため、スペインが非常事態宣言を出してから、早くも2カ月が過ぎた。

「早くも」と書いたのは、国境も都市も封鎖され、外出制限もかけられたが、あまり苦痛を感じなかったからかもしれない。3日か4日に一回だけ、スーパーに買い出しに行く以外、ほぼ外出はしなかった。ここまで長期間、一日中パジャマで暮らしたことなど、過去に経験したことがなかった。

1日900人近くの死者が出ていた

 私は静まり返ったバルセロナのアパートに籠り、毎日、続出する死者のニュースを見て呆然としていた。

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「日本もそのうち同じ状況に直面する」――最初はそう思っていた。都市封鎖や外出禁止令もない日本をテレビで眺めながら、同じウイルスなのかと目を疑うこともあった。

人気の途絶えたランブラ通り

 5月27日現在、スペインでは感染者23万6769人、死者2万7118人。1日900人近くの死者を数えた約2カ月前と比べ、現在は50人を下回っている。集中治療室の病床にも余裕が生まれてきた。政府は非常事態宣言こそ解除しないが、外出禁止のルールも徐々に緩めている。事態は日に日に改善されている。

身内を失った人、仕事復帰できない人……

 初夏は、コロナとは無関係に同じタイミングでやってくる。野外フェスティバル、各スポーツ競技の決勝戦、初ビーチ、初キャンプ……。1年で最高の季節の始まりだ。

 しかし街中には、例年の賑やかさがない。マスクをする若者たちは、ぎこちない頬キスやハグをして久しぶりの再会を祝福。ただ、いつもの大声や笑みが少ない。何かが、彼らの体の中から抜けてしまったのか。その日その日を楽しむスペイン人が、どことなく悲しげだ。

宮下洋一氏

 コロナで身内を失った人、仕事復帰できない人、その両方を抱える人と、近い将来に希望を見出せない人々の嘆きが聞こえてくる。ヨーロッパ諸国を見渡せば、スペインほどの挫折を味わっていないようにも見えてしまう。