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【中日】東京生まれの忌野清志郎は、なぜドラゴンズを愛したのか

文春野球コラム ペナントレース2017

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「清志郎さん、明日は絶対勝ちますよね!」

 それから8年後……2007年9月に東京ドームで行われた巨人との3連戦。ドラゴンズは、天王山で負け越し、優勝が厳しい状況に追い込まれたが、敗れた2戦目、うなだれてドームから帰る私の背後から「おーい! 加藤!」という声が。振り向くと川又さんで、その横には、ガン闘病中の清志郎さんがいた。ああ、野球が観られるくらい回復したんだ!

「清志郎さん、今日は負けましたけど、明日は絶対勝ちますよね!」

「ウム」

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 そう言って、黙って握手してくれた清志郎さんの手の温もりは、いまだに忘れない。

 ドラゴンズはその年、リーグ優勝を巨人にさらわれたが、CSで巨人を3タテ。日本シリーズに進出し、53年ぶりの日本一を達成したのはご存じの通り。清志郎さんも川又さんとナゴヤドームでシリーズを観戦。親友とともに歓喜を味わった。

53年ぶりの日本一の喜びを川又米利とともに現地で味わった忌野清志郎 ©文藝春秋

 翌2008年2月、日本武道館で「完全復活祭」を開催したときは本当に嬉しくて、また優勝特番に出ていただけるかな……と思ったが、2009年5月2日、それは叶わぬ夢となった。聞きたくない報せを聞いて、ずっと涙が止まらなかったのを覚えている。

 それからさらに8年が過ぎた。5年連続Bクラスに沈みそうな今のドラゴンズは、果たして清志郎さんに「だって、頑張ってるじゃない」と言ってもらえるような戦いができているのか? 今シーズンはまだ終わっていない。CS進出の可能性が完全になくなるまで、頼むから真剣な戦いを見せてくれないか。最後まで諦めず戦い抜いた、清志郎さんのように……。

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※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/3811でHITボタンを押してください。

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