5月18日、ソフトバンクグループ(SBG)は2020年3月期決算を発表した。本業のもうけを示す営業損益は1兆3646億円の赤字で、純損益も9615億円の赤字。いずれも国内企業では史上最大規模の大赤字である。

 だが、当の孫氏は全く動じていないかのように見える。決算発表直後には自身のツイッターにこう投稿した。

〈防護服(100万着)、フェイスシールド(80万個)、ゴーグル(23万個)、一般サージカルマスク、の調達完了。〉(5月20日)

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〈新たに防護服に加え「アイソレーションガウン」1000万着調達できました。〉(5月25日)

 孫氏は3月末以降、新型コロナウイルスに関する投稿を続け、医療物資の確保に熱中している。1兆円を超える大赤字を発表した直後というのに、防護服やマスクを提供する余裕など本当にあるのだろうか。

ジャック・マー氏と ©共同通信社

「10兆円ファンド」の相次ぐ失敗

 SBGをここまで大きくした要因の一つに、孫正義の投資家としての才覚があることは間違いない。2000年、孫氏が20億円を出資した中国のIT大手アリババは、いまや時価総額が60兆円を超える巨大企業となり、SBGの持ち分は18兆円まで拡大した。このアリババ株がこれまでのSBGを支えてきたのだ。

 その一方で、孫氏が主導する投資事業が、いまSBGを追い詰めているのも事実である。今回の大赤字の要因は、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)による相次ぐ投資の失敗である。SVFは孫氏が10兆円もの資金を集めて立ち上げ、「ユニコーン」と呼ばれる企業価値10億ドル超の未公開企業に投資するプロジェクトだ。

 だが、昨年来、シェアオフィス大手ウィーワークや配車アプリ大手ウーバーなど、投資先企業の価値が次々と下落し、1兆8000億円もの投資損失を抱え込んでしまった。いずれも各企業の経営者に惚れ込んだ孫氏が自ら投資を決めたものであり、その責任が孫氏にあることは明らかである。