1ページ目から読む
3/3ページ目

アメリカの中国批判も激化している

 習近平が力を入れてきた対外イメージの向上についても、国内から懸念が出ている。中国の諜報機関である国家安全部(MSS)につながりのある政府系のシンクタンク、中国現代国際関係研究院が、最近、習近平のためにまとめたリポートによると、新型コロナによって中国に対する国外からの敵意が高まっており、1989年の天安門事件以降で最悪の状態になっていると警告されている。

 一方、米国側もまた、トランプやマイク・ポンペオ国務長官などがツイッターやインタビューで繰り返し中国を批判している。その声は世界中に届いているが、それだけではない。例えば国内では、米共和党の議員や候補者らは、今年の大統領選と議会選挙に向けて、新型コロナの混乱の責任は中国にあると明確にさせるために、SNSで広告を打っている。

連邦議会を目指すフロリダ州の共和党候補、ケイシー・アスカー氏のキャンペーン広告(Facebook)

 トランプは新型コロナによる経済の停滞や溢れる失業者の責任を中国に厳しく向けることで有権者の支持を固めようとしているが、共和党はSNS広告で結果的にそれを支えているのだ。

ADVERTISEMENT

“中国叩き”は大統領選勝利への鍵

 最近の米調査機関ピュー研究所による意識調査では、米国民の66%が中国を否定的に見ていることが判明している。また71%が習近平を信用できないと答えており、62%が中国の影響力を大きな脅威だと見ている。

 もっと言うと、トランプが大統領になってから、米国人の中国に対するイメージは20%近く悪化している。これは、トランプと中国強硬派の側近たち(ピーター・ナバロ大統領補佐官やウィルバー・ロス商務長官、さらに国家安全保障問題担当のマット・ポッティンガー副顧問など)の思惑通りである。

トランプ大統領 ©AFLO

 対中嫌悪感によって、新型コロナ感染拡大の全責任を中国に向けようとするトランプ政権の情報戦がうまくいっているのだ。そしてトランプは、中国叩きが大統領選勝利にも重要な要素になると考えている。

 新型コロナをめぐる情報戦は、こうした米中それぞれの思惑を背景に、今後もさらに激化していくだろう。