新型コロナウィルス感染症(COVID-19)について、情報戦が激しく繰り広げられている。
「新型コロナのウィルスがどこで発生したのか」「この感染拡大の原因は誰にあるのか」などに関連した情報が、SNSやメディアを通じて今も飛び交っているのだ。こうした情報戦にかなり力を入れているのは新型コロナの発生源である中国で、中国発の情報によって国家同士が争うような事態にもなっている。
今回、中国の情報工作やプロパガンダはとにかく徹底しているように見える。中国政府は何がなんでも自分たちの責任を回避しようとしている――そのように思えてならないのだ。その実態からは、中国政府の脅威を再確認させられる。
中国国営TVが流した“米軍生物兵器説”
例えば最近、こんな報道が話題になった。中国国営TV局の中国グローバルテレビジョンネットワーク(CGTN)のアラビア語版が、とんでもない“ニュース”を視聴者たちに放送していたのだ。それによると、2019年9月に何人かの日本人がハワイで新型コロナに感染し、その後には米軍の生物兵器研究所がなぜか封鎖されたという。さらにオンラインからは、その研究所の情報も消えていた……。
つまり、新型コロナは現在考えられているよりも前から発生し、しかもそれは米軍の生物兵器だったと示唆する内容だ。
もちろんこの話は事実無根で、そのニュースの中でもなんら根拠は示されていない。それでも海外向けの国営TVを使って、米国と日本が最初にこのウィルスを広めたと印象付けようとしているのだ。アラビア語は世界で3億人以上が使う、世界第5の使用者数を抱える言語である。アラビア語圏にこうした情報を広めることで、実際にそれを信じてしまう人が出てくる可能性も、決して否定できない。
中国大使館のツイッターでは……
また、中国は今回、大使館を通じた“工作”も行っている。
世界の中国大使館や領事館で100以上のツイッターアカウントを活用しており、在日の中国大使館も、中国国内では使用禁止になっているツイッターの公式アカウントで、「COVID-19ウィルスについて米国による24のうそとその真相」という動画を5月15日から8回にわたって掲載している。
#COVID_19ウイルスについて米国による24のうそとその真相の第一回を肉声でお届けします。いわゆる「中国ウイルス」や「武漢ウイルス」といった呼び方はウイルスの名前を特定の国と地方に関連付けてはならないというWHOの命名規範に反するものであるとともに、人種差別を引き起こす原因にもなります。 pic.twitter.com/qwz7RyI58X
— 中華人民共和国駐日本国大使館 (@ChnEmbassy_jp) May 15, 2020
その動画では、「最近、米国の一部の政治屋とメディアは米国内の新型肺炎の感染への対応が不十分なことに対する人々の関心をそらし、中国に責任をなすりつけようと、常軌を逸したさまざまなうそを言い続けている」と嘯いている。