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「偽情報を流布するロシアの戦略を使っている」

 また、新型コロナが漏れたのではないかと指摘されている武漢のウィルス研究所の所長や研究者が中国国営TVのインタビューに応じて、新型コロナと研究所は無関係であるとも語っている。しかし、研究所などのスタッフは政府の厳しい監視下に置かれているので、客観的なインタビューなどそもそも不可能で、結局は、政府の思惑通りのコメントを続けていると見られている。つまり、情報工作に駆り出されているのである。

 さらに最近では中国政府系のSNSアカウントなどが、ロシア政府系のTV局であるRT(ロシア・トゥデー)の反米報道をどんどんリツイートして利用している。RTもまた、今回の新型コロナは米国が発生源であると報じており、「新型コロナは米国が計画したものである」といった具体的な発言もトーク番組などで放送している。それを中国が拾って、拡散させているのだ。

“新型コロナの発生源”とも報じられた武漢のウィルス研究所 ©AFLO

 もともとロシアは2016年の米大統領選挙で、米国に大々的な情報戦を仕掛け、トランプの勝利に貢献したと分析されている。米シンクタンクのブルッキングス研究所は「ロシアが行ってきた偽情報を流布する戦略を、いま中国が使っている」と、中国の情報工作について指摘している。

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「習近平は無能」と感じ始めた国民

 筆者の取材に米諜報関係者は、「中国は今、ロシア以上にプロパガンダ活動を大規模かつ活発に行っている。新型コロナの発生について自分たちの責任は回避できないという焦りから、なりふり構わず情報工作を行っていると言える。なんとか自分たちの責任を逃れようとしているのだ」と語る。

 さらに「中国は、対外的なイメージ悪化が、結局は国内情勢をも悪化させる可能性があると警戒している。これは、習近平国家主席の立場すら危うくなりかねない事態だと考えていい。

©AFLO

 中国国内でも、習近平が対応に苦慮している米中貿易交渉や、通信機器大手ファーウェイなどの中国企業に対する米国の措置、米英などにいる中国の研究者・留学生などにも悪影響が及んでいたりと、国民や共産党員の中には『習近平はリーダーとして無能』と感じる人たちが増えつつあるはずだ。そんな声は封じられて表には出てこないと思われるが、習近平には焦りがあるだろう」とも述べている。