いまから11年前のきょう、2006年8月24日、チェコのプラハで開催されていた国際天文学連合(IAU)の総会で、太陽系の惑星およびそのほかの天体について新たな定義づけを行ない、これにもとづき冥王星を従来の9惑星から除外するという決議案が、出席者の賛成多数で可決された。冥王星はこの決定により、新たなカテゴリーとしてつくられた「準惑星(dwarf planet)」に分類されることになった(dwarf planetは日本では当初「矮惑星」と仮訳された)。
冥王星は、海王星のさらに外側に未知の惑星があるというアメリカの天文学者ローウェルの予測にもとづき、彼の弟子のトンボーによって1930年に発見された。しかし、1990年代以降、海王星よりも遠くを回る小天体である太陽系外縁天体が次々と見つかる。これにともない、冥王星もまた太陽系外縁天体のひとつであることが確実となった。発見された外縁天体のなかにはかなり大きなものもあり、2005年には冥王星より大きいもの(エリスと命名)も見つかった。はたしてそれらを冥王星と同じく惑星と呼ぶべきかどうか。IAUはこうした議論に備え、惑星の再定義のための審議を03年より秘密裡に始めていた。
審議が秘密裡に進められたのは、マスコミなどの外部からの攪乱を防ぎつつ、天文学者だけで冷静に議論するためであった(渡部潤一『新書で入門 新しい太陽系』新潮新書)。惑星の定義の原案は、2006年のIAU総会の2日目(8月15日)についに提示され、これを踏まえて決議案が検討される。その結果、惑星とは「(a)太陽の周りを回り、(b)ほぼ球状で、(c)自らの軌道の近くではほかの天体を一掃してしまっている天体」と定義された。これに対し、準惑星とは「惑星の定義のうち(a)(b)の要素は満たしているものの、(c)自らの軌道の近くでほかの天体を一掃しきれず、しかも(d)衛星でない天体」とされた。冥王星の場合、その軌道の周辺に多くの小天体が存在することから、準惑星に分類されたのである。
準惑星とは、いわば、惑星に成長する途中の段階のまま残された天体である。したがって冥王星は、太陽系誕生の謎を解く鍵を握る天体として、むしろ準惑星となったがゆえ重要性を増したといえる。一昨年の2015年7月には、NASA(アメリカ航空宇宙局)の探査機「ニュー・ホライズンズ」が冥王星に最接近し、多くの写真やデータを以後1年近くをかけて地球に送信、その素顔が徐々にあきらかになりつつある。