隣の芝は青く、花は赤い。人間誰しも他人を羨む気持ちはある。ただ、羨望は時に刺激となり、意欲となり、成長や競争を促すエネルギーとなる。中日ドラゴンズ応援番組CBCテレビ「サンデードラゴンズ」では「この選手のこれが欲しい」という企画を放送。プロが認めるプロの凄い所とは一体どこなのか。未公開の部分も含めて紹介しよう。
開幕投手の大野雄大は「柳(裕也)の打撃」と即答。「やはりピッチャーが打つと打線が繋がります。去年、僕は4安打でしたが、その時は得点が入ったので、投手のバッティングは大事だなと改めて思いました」と振り返る。
去年、大野雄は不名誉な連続打席無安打記録の更新に注目が集まった。セ・リーグ記録は福岡ソフトバンクホークスの工藤公康監督(当時巨人)が残した84打席。大野雄は80打席ノーヒットだった。
「もちろん、意識していました。正直、ここまで来たら、1番を狙おうかなとも思いました。でも、あれは工藤さんだからこそなんです。『あんな大投手でもヒットが出なかったんだ。野球は奥深いなぁ』となる。僕みたいなポンコツピッチャーが記録を抜いたら、『こいつ、投げても打っても本当にポンコツやな』となる。だから、必死でした」と笑う。
去年5月、大野雄はナゴヤドームの中日・DeNA戦で81打席ぶりにヒットを放ち、ガッツポーズ。歓喜と安堵が入り混じった。そんな大野雄を羨ましがるのは小笠原慎之介だ。
「あの体の強さが欲しいです。オンとオフのスイッチの入れ替えに付いて行ける体。言い方は悪いんですが、大野さんのキャッチボールはめちゃくちゃなんですよ。ただ、ブルペンに入ったら、全然違うんです」
以前、吉見一起も指摘していた。
「大野のキャッチボールはチームでも下の方。投げ方も変だし、ボールの強さも感じません。でも、あのフォームは傾斜に合うんです。平地が得意でマウンドが苦手なピッチャーが多い中、大野は珍しく逆。うまく傾斜を利用して球に力を伝えられるタイプなんです」
「梅津のでかい顔と短い手足だけは欲しくないですね」
大人気だったのは梅津晃大だ。山本拓実は切実に打ち明ける。
「手足の長さが欲しいです。トレーニングルームで並んで立った時、梅津さんの腰骨が僕のみぞおちの辺りにあったんです。さすがに落ち込みました。確かに小さい体は扱いやすいですが、梅津さんの手足だったら、もっと力強い球が投げられるんじゃないかと思います」
祖父江大輔も「梅津の足。僕、短いんで。ズボンは毎回すそ直しです」と苦笑い。加藤匠馬は「梅津になりたい。ルックス、スタイル、人気。野球もうまいし、完璧です。去年、デビュー戦で受けたんですけど、顔だけじゃなく球も凄くて。初勝利に立ち会えて良かったです」と惚れ込む。藤嶋健人は「梅津さんの剛速球。あんな大砲みたいなボールを投げてみたい」と目を輝かせた。しかし、この男は違った。
「梅津のでかい顔と短い手足だけは欲しくないですね」と敵意を剥き出したのは柳裕也だ。今年3月、「ドラゴンズイケメンコンテスト2020」の第一次投票が行われ、ベストナインの上位9選手が選出されたが、実はその中に梅津と柳は入っているのだ。「今は同じくくりですからね。どっちかというと、上から言っています。強気ですよ。今は梅津が僕をライバル視していますね。僕は眼中にないですけど」と鼻息荒い。しかし、背伸びの限界に達したようで「これダメでしょ。梅津ファンに怒られます」と白い歯を見せた。
その梅津が興味津々なのは外国人投手だ。
「(ライデル)マルティネスの速球ですね。僕は先発ですが、ああいう圧倒できるストレートを追い求めています。(ジョエリー)ロドリゲスも速かったので、通訳のルイスさんに秘訣を聞きくと、(エンニー)ロメロもそうなんですが、キャッチボール前に重いボールを壁に向かって投げているということでした。今年から僕もそれを取り入れています」
憧れの大谷翔平についても熱く語った。
「野球以外に欲求がないような性格が羨ましい。僕はオフになると、完全に休みたくなりますが、大谷さんは常にウエイトルームにいるという話を聞きますし、お酒も飲まないとか。僕は飲みたくなっちゃう。とにかく野球に対する思いの強さですね」