昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/07/01

日本の政治は、科学を都合よくつまみ食い

 レジ袋有料化とプラスチックごみ問題の周辺をみていくと、こうした「不都合な真実」が次々とみつかる。それにもかかわらず、こうした回り道とも思える行き方にこだわるのには、訳がある。

 日本科学技術ジャーナリスト会議という科学ジャーナリストの親睦団体が授与する今年度の科学ジャーナリスト賞に、中日新聞の連載「南海トラフ80%の内幕」が決まった。来るべき国難ともいえる巨大な南海トラフ地震について、国の委員会は、地震学者たちの異議に半ば封をする形で過大な発生確率を国民に示して防災対策を進めている。その内幕を克明に調べあげたのが、この連載だ。結局は防災対策を進めるのだから、その目的のためなら科学的事実は多少ねじまげてもかまわないのだろうか。どうせ言っても国民にはわからないだろうから、不都合な真実は伏せて事を進めたほうがよいのだろうか。そうではないはずだ。

©iStock.com

 この国の政治は、自分の思惑に沿って科学を都合よくつまみ食いする傾向にある。社会がなにかを判断して将来を決めていくとき、それがどのような事実に基づくのかを市民は共有する必要がある。そうでなければ、自分たちの将来は自分たちで決めるというこの民主的な社会は成立しないからだ。たとえそれが「不都合な真実」であっても知っておきたい。そのうえで、みんなで考え、納得して行動する。判断のもとになる事実をフェアに公表することを当局側に期待することは、いまの政治をみるかぎり、できない。わたしたちの立ち位置は、わたしたちの側で調べて整理するしかないのだ。

©iStock.com

 新型コロナウイルスの感染拡大で、日本では罰則などの強制力がなくても、市民は外出自粛に応じた。プラスチックごみの問題も、これに重なってみえる。法律で縛ることに頼るのではなく、これからの社会をどうしたいのかを市民一人ひとりが考え、小さな行いを重ねていこう。レジ袋の有料化を機に、プラスチック製品は必要なものにかぎって使う社会に変えていきたい。わたしたちがプラスチックで汚した地球を、そのまま子どもたちの世代に受け渡さないために。

この記事の写真(6枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー