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「レジ袋有料化」環境に効果ある?「プラごみゼロ」に“不都合な3つの真実”

海洋プラスチック 永遠のごみの行方

2020/07/01
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プラスチックごみについての“誤解”

 こうした問題を考えるとき、そのやり方にはたぶん二通りある。プラスチックごみは少ないほうがよいにきまっているのだから、「とにかく『プラごみゼロ』を目指そう」と脱プラスチックに向けた共闘を呼びかけるやり方。もうひとつは、たとえ不都合な真実があったとしても、まずはその事実を共有し、そこを出発点にしてみんなで解決策を考え行動しようというやり方。わたしが選んだのは後者だ。

 調べてみると、プラスチックごみの実態についてわたしたちが誤解していることも、かなりありそうだった。たとえば、日本は世界的にみてもリサイクルの優等生だという誤解。プラスチックごみのリサイクル率は8割といわれることもあるが、この「リサイクル」には焼却処分も含まれている。燃やした熱を利用する「熱回収」と呼ばれる方法で、世界的にはリサイクルとは認められていない。世界標準でいうリサイクルに回されるプラスチックごみは4分の1くらいにすぎず、けっして高い割合ではない。

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不都合な“3つの真実”とは

 まず、レジ袋の有料化を義務づけるといっても、抜け道はある。レジ袋の素材に、植物などを原料とする「バイオマスプラスチック」が重さにして4分の1以上含まれていれば、あいかわらず無料配布が許される。プラスチックごみの削減をうたった省令改正なのに、この際だから、プラスチックの原料となる石油の節約も紛れ込まそうというわけだ。植物原料であってもプラスチックはプラスチックで、自然分解されないものもある。レジ袋有料化のピントがぼけてしまった。実際に、コンビニや外食チェーンのなかに、この方法で無料配布を続けるところがでてきた。

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 次に、プラスチックの生産量を減らせば石油の節約になるというこの考え方。それはたしかにそうなのだが、プラスチックの原料となる石油の量は全体の3%にすぎず、石油の8割は熱源や動力源として消費されている。プラスチック生産減の効果は、これら燃料の節約効果にくらべれば、大きくはない。

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 そして最後に、レジ袋を買わずにマイバッグを使うのはよいが、これがプラスチック製のバッグだと、もちろんその大きさにもよるが、捨てる際にはレジ袋10袋分くらいのプラスチックごみになる。また、生産から破棄までをトータルで考えると、地球温暖化をもたらす二酸化炭素の排出を抑制するという観点からは、マイバッグは少なくとも50回は繰り返し使う必要がある(一般社団法人「プラスチック循環利用協会」の冊子「LCAを考える」報告例より)。マイバッグはていねいに何度も使わなければ、意味がない。