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コロナで医療機関の経営が傾く時代

 さらに、そこへコロナウイルスの世界的な拡大があり、日本は概ね第一波は乗り切ったとされるものの、外出自粛を求める緊急事態宣言の発令による爪痕は大きく、特に耳鼻科や小児科といった診療科ではコロナ感染を怖れる皆さんの診療件数が激減してしまいました。まあ、うっかり具合悪くて病院に行ったら、コロナで具合悪い人と待合室で一緒になって感染する怖れがあるなら、お家で寝て我慢しますよねえ。

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 高齢者もあんまり外出しなくなってしまったので、今度は骨折などの怪我が大きく減りました。高齢者の健康を考えるとお散歩などアクティビティで外出しないというのも良くないわけですが、いずれにせよ、怪我や病気で気軽に病院に行くケースが減れば、それだけ病院経営も傾くのは当然です。年寄りが増えるから医療費も大きく嵩むのだ、これは大変だと思っていたら、コロナのお陰で年寄りが病院に寄り付かなくなって医療機関の経営が傾く時代がくるなんて思ってもいませんでした。

 そもそも、人間が罹る概ねの病気は数日おとなしく寝ていれば治るものであって、少し熱が出たから、具合が悪いからと病院に頻繁に行くのは優れた国民皆保険制を擁する日本特有の現象と言ってもいいぐらいのものです。

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日本の医療システムの根幹をも蝕むコロナウイルス

「大病院にいったら2時間待たされた」と文句をいう日本人は少なくないのですが、これが北欧やらイギリスやら海外に行けば「診療してもらえるのは2週間先」という事例がザラであるだけではなく、アメリカに至っては「コロナで死にそうになったので入院していたら、診療費として1億2,000万円請求された」なんてことも起きます。それもこれも、日本の医療や保険制度が優れているうえに、過剰なまでに日本の医療関係者が倫理観高く誠実に働いてくれるからです。もう感謝しかありません。

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 それでも、日常的な病気については「寝ていれば、それなりに治る」と分かってしまうと、本当に大事な病気の発見が遅れて助かる病気も助からなくなったりする一方、日本のかかりつけ医制度の根幹を担う診療所や小規模病院がバタバタと倒産してしまいかねません。

 また、コロナウイルスの感染疑いで医療機関がバタバタしている間に、早期に手術していれば問題なく治るはずだった初期がん患者さんや慢性疾患の方が手遅れになって亡くなりかねないケースも出ます。コロナウイルスは日本の医療システムの根幹をも蝕んでいるのです。