どうも我が国は「目の前に危機がある」ときに限ってトップ人事を巡る抗争が激しくなる悪弊があるみたいなんですよね。

 タイタニック号が氷山にぶつかって「沈没するぞーっ」というときに「選挙の時期が来たので船長変わりまーす」とか言われたら乗員乗客みんな困るわけです。お前さあ。いま他にやるべきことあるだろ。

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都知事選に先駆けて行われる日本医師会の会長選挙

 目の前の事例で言えば、7月5日投開票の東京都知事選。オリンピックが本当に開催できるかすら分からない危機的な状況で50億円をかけた『女帝』小池百合子と21人の小人たち。東京各地で無駄に貼られる堀江貴文の顔写真入りポスター。街を歩いて選挙公報見ているだけで胸やけがしてゲップが止まりません。まだ2020年なのに世紀末な感じがするんですよね。選挙は民主主義の常とはいえ、なんでこんなにロクでもないことになってるのでしょう。

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 6月27日、都知事選に先駆けて行われるのは、みんなご存じ日本医師会の会長選挙でございます。え、いまやるの。

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 駒込にある日本医師会館ビルは激しい権力闘争の場として「伏魔殿」と呼ばれ、かつて医療業界は「欲張り村の村長」とまで揶揄される面白体質だったわけですが、2020年にもなると医療現場は薄給でこき使われる超絶ブラックな職場として広く日本社会に知られるようになりました。

今や医師はあまりに大変な職業に

 もともと、医師を育てるのは社会的にも高コストな一方、医師国家試験に合格したお医者さんの卵は研修医となり、さしたる給料も出ないのに夜勤当直当たり前です。一人前になってからも、勤務医の皆さんは下手をすると病院に3連泊とかいう事態が平気で発生し、地方の病院では専門医の不足ゆえに帰宅後も入院患者さんの容体急変で平気で電話で呼び出されることもしょっちゅうです。

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 そればかりか、地方で基幹病院の院長をやっている友人は、コロナ禍で地域医療を支えるために文字通り病院に10連泊で診療に当たったりしていて、頭が下がるというよりは地面に頭がめり込む感じで申し訳ないなと思うのです。管理職だからね、しょうがないね。でもここまでくると、年賀はがきの売り上げ不振で自腹を切ってはがきを買う郵便局長みたいな笑えない話になっているのが気になります。

 その結果、医師や看護師の皆さんの給与や診療・検査設備の更新、さらには情報化投資なども必要な一般病院の損益率は2.7%の赤字(2018年)。「医師になれば一生喰いっぱぐれはない」、「開業医になりさえすれば高給取りで地元の名士だ」と褒め称えられるポジションだったのは今は昔、その負う責任に比べてあまりの激務薄給で実に大変な職業になってしまったのであります。