いわゆる「コロナ禍」で、あらゆる産業が壊滅的なダメージを受けている。アパレル大手・レナウンの経営破綻のニュースを聞いて、誰もが「決して他人事ではない」と感じたはずだ。

 そして、こうした経営面に押し寄せるダメージを、誰よりも強く感じている業種がある。他ならぬ「医療機関」だ。

医療機関における経済ダメージの大きさ

 日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会の病院三団体は5月18日、「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査(速報)」を共同で発表した。

ADVERTISEMENT

 三団体に加盟する4,332の病院に、コロナ禍による経営状況への影響を訊ねたところ、26.3%にあたる1,141病院から有効回答を得たという。

 それによると、回答した病院の今年4月の平均利益は36,109,000円の赤字で、利益率は9%の赤字となっていた。昨年の同月は利益が平均4,292,000円、利益率は1%の黒字を出していたのを見ると、ダメージの大きさがよくわかる。

 中でも深刻なのが「新型コロナウイルス感染患者入院受入病院」で、今年4月の平均利益は100,413,000円の赤字(前年実績は3,204,000円の黒字)、利益率は11.8%の赤字(同0.3%の黒字)と、大打撃を受けていることが見て取れる。

©︎iStoock.com

“不急の手術”を延期せざるをえない

 新型コロナ患者受入病院が減収減益となる理由はいくつかある。

(1)一定数の病床をコロナ患者専用として割り当て、それに連動して病棟を閉鎖するなどの措置を講じなければならない

(2)良性疾患など“不急の手術”を延期するケースが増えている

(3)新型コロナ患者受入れの実態に見合った診療報酬が設定されていない

(4)「新型コロナ患者を受け入れている」という風評を受けて外来受診者数が激減

――などだ。

 1.2.3.は連動している。

 千葉県内の民間病院で外科部長を務める医師が解説する。

「コロナ患者を受け入れている病院では“コロナ病棟”に多くの人手を回す必要があるため、それ以外の一般病棟の医師、看護師の数を減らさざるを得なくなる。そうなると今度は術後管理のキャパシティが落ちるため、人員配置の基準に合わせて手術件数を制限せざるを得なくなるのです」