医療法では、病床数により定められた数のスタッフを配置しなければならないことになっている。普段からギリギリの人員体制で運用しているところに、コロナ病棟を開設すると、そこでの集中治療に麻酔科医が動員されるなどして、思うように手術もできなくなる病院もあるという。
「扁桃炎で39度台の発熱を繰り返すような場合など、従来なら早めに手術をしていた症例でも、いまは発熱の都度、抗菌剤を使って凌ぐ――というケースが珍しくない」(首都圏の公的病院に勤める耳鼻咽喉科医)
整形外科や眼科などの良性疾患の手術は長期的に待たされるケースが多い。地方のある国立病院では、白内障など緊急性の低い手術は半年以上先に延期し、現状はがんなどの手術のみに対応しているという。また、同じがんでも、一部の前立腺がんなどのように比較的進行の遅い病気は、手術の優先順位が下がる傾向がある。
もちろん、救急疾患や命に直結するような緊急性の高い症例の手術は行っているが、できる数には限りがある。場合によってはその病院では手術を行わず、コロナ感染者を受け入れていない別の病院に患者を送り、外科医も転送先に出向いて手術を行うケースもある。
首都圏のある大学病院の外科の教授が、苦笑交じりに語ってくれた。
「コロナ関連じゃない診療科は結構ヒマなんですよ。私もGWはカレンダー通りに休みました。こんなにまとまった連休を取ったのは、医者になって以来初めてです」
コロナ患者の受け入れは「やればやるほど赤字が増える」
そんな中、あるコロナ受入れ病院の幹部医師が、匿名を条件に語ってくれた。
「大幅に少ない人数しか受け入れられなくなる病院もあり、それだけでも経営的なダメージは甚大です。しかも、その少ないコロナの患者さんは、診療報酬も決して高額ではない。新型コロナの場合、多くは“すこし重いカゼ”のような症状で長期間入院することになるので、経営的に見たときのメリットは小さいのです」
コロナ陽性とわかっている患者同士であれば相部屋にしても問題はない。しかし、他の病棟の患者から隔離しやすい――などの利便性もあって、コロナの患者を個室に入れるところもある。病院側の都合や医療上の必要があって個室などの差額ベッドを使った場合、医療機関はその差額を患者に請求してはならない決まりがある。こうなると、差額ベッド代が高額な病院ほど、コロナ患者を受け入れることで減収になってしまうのだ。