全国で鳥取にだけスターバックスが出店していなかった2014年当時、平井伸治(しんじ)知事が発した名言、「スタバはないけど、日本一のスナバ(砂場)はある」。全国的にも話題になった知事の会心の“ダジャレ”にかけて、『すなば珈琲』は開業した。それから10年、すなば珈琲は県内に11店舗を構える、鳥取最大のコーヒーチェーン店となった。

 同店の人気メニューや、全国展開しない理由、唯一の県外店舗ができた背景について、“新”鳥取駅前店の村上春希店長に話を聞いた。(全2回の2回目/はじめから読む

すなば珈琲1号店は2022年に“新”鳥取駅前店としてリニューアルオープン。(左から)アイスのキャラメルウィンナーコーヒー、砂焼きコーヒー ©︎深野未季/文藝春秋

 

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ーー人気メニューはなんでしょうか。

村上 やっぱりコーヒーは人気ですね。3種類用意してますが、特に人気なのは「砂焼きコーヒー」でしょうか。「すなばブレンド」と迷われて、砂焼きを選ぶ方が多いような。

鳥取砂丘の砂を使った「砂焼きコーヒー」

ーー「砂焼きコーヒー」、気になるネーミングです。

村上 鳥取砂丘の砂で焙煎しています。鳥取砂丘の砂を勝手に持っていくのはだめなんですよ。だから正式に許可をとって、定期的に砂を集めさせてもらっています。

鳥取砂丘

 普通の焙煎機を使うと、どうしても豆に焼きムラができてしまうんですが、砂焼きコーヒーは砂をつかって、豆をオーブンの板でサンドイッチにして焼き上げる。そうすると豆に熱が均等に加わって、焼きムラを抑えられるんです。

ーー手が込んでいますね!

村上 焙煎に50分くらいかかります。それから、1日寝かせていて。抽出もサイフォン式なんですよ。なので、お客さんには少しお時間いただいてしまいますが、えぐみが少ないっていう風におっしゃる方が多いですね。まろやかで、すっきりとした苦味のある、バランスのいい味かなと思います。

“新”鳥取駅前店の村上春希さん。『すなば珈琲』のコーヒーはサイフォン式で抽出 

ーークリームが乗ったドリンクはサイズがものすごく大きいんですね。

村上 ドリンクだけじゃなくて、パンケーキなんかでもホイップをマシマシで乗っけていますね(笑)。「砂焼きコーヒー」もそうですが、まずはお客さんに「なんだこれ!」って思ってもらいたいという考えがありますね。あとは、量を増やすことで長居してもらいたいなっていう狙いもあります。

『すなば珈琲』の「ば」の点々は、コーヒー豆の形に

 食事だと、「薬膳大山鶏カレー」を召し上がられる方が多いですね。鳥取って、カレーの消費量が1位なんですよ。なのでうちもそこはこだわりたいなと。鳥取の名産の大山鶏を使っています。

 あと、モーニングも人気です。観光で来て、ホテルの朝食ではなくこちらで食べて下さったり。開店前から並んでくださる方もいます。

ーー地元の方に愛されている印象ですが、やっぱり観光の方も多いんですね。

村上 そうですね。うちは基本的に鳥取県内にしか店舗がないので、観光で立ち寄ってくださる方が多いのかもしれません。

ーー全国展開の予定はあるのでしょうか。