「スタバはないけど、日本一のスナバ(砂場)はある」。
全国で鳥取にだけスターバックスが出店していなかった当時、平井伸治知事が発した名言だ。全国的にも話題になった知事の会心の“ダジャレ”にかけて、「すなば珈琲」が登場したのは2014年のこと。地元は大いににぎわったが、そのわずか1年後に、スタバは満を持して鳥取に出店する。
あれから10年。すなば珈琲はいま、どうなっているのだろうか? “新”鳥取駅前店の村上春希店長に話を聞いた。
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平井知事の「スタバはないけど砂場はある」がきっかけ
ーーきょうは平日ですが、お客さんでにぎわっていますね!
村上春希店長(以下、村上) 平日は大体このくらいでしょうか。土日のように待ち時間が出るほどではないですが、この店舗は駅前で立地がいいですし、いろんなお客さんが足を運ばれますね。
ーーお名前が村上春希さん、なんですね。
村上 はい。小説は書けませんけど(笑)。
ーー(笑)。すなば珈琲を運営する「ぎんりんグループ」のオーナーは村上無費価さんですよね。ご関係があるのでしょうか。
村上 父です。もともとは、鳥取県内で展開する居酒屋チェーン店の事業を中心でやっていて、私も22歳くらいまでそこで働いていました。すなば珈琲の事業をはじめたのが2014年で、僕が携わるようになったのはそれから3、4年くらいですね。
ーー2014年は鳥取の平井知事が「スタバはないけど砂場はある」と発言して話題に。この“ダジャレ”がオープンのきっかけだったそうですね。
村上 そうです。オーナーがテレビのニュースか何かを見て「これだ!」と思ったらしくて、すぐに平井知事に「使わせてもらっていいですかね?」と連絡を取って。知事も「どうぞどうぞ」と快諾してくださった。
居酒屋のあった店舗を改装して「すなば珈琲」に
ーー居酒屋から喫茶店と、思い切った事業展開ですが、初めて聞いたときはどう思いましたか?
村上 もうびっくりしましたよ。私はオーナーの車に一緒に乗っているときに「すなば珈琲、始めるから」と言われて。
ーー店名まで決まっていたんですね。
村上 最初は、「なんだそれ」でした(笑)。父は「鉄は熱いうちに打て」が口癖で、やるって決めたらすぐに実行するタイプの人なんです。なので、「ああ、これはもうでっかくやるんだな」と。あれよあれよという間に、居酒屋のあった店舗を改装してすなば珈琲にすることが決まりました。
1号店がオープンしたのは、オーナーが「やる」って決めてから1ヶ月くらいだったと思います。最初は地元の放送局とかに「取り上げてください」ってFAXを送ったりして、自分たちで売り込んでいましたね。