『すなば珈琲』が鳥取以外に出店しないワケ

村上 すごくよく聞かれるんですけど、ないですね。以前は東京や大阪に期間限定で出店したこともあったんですが、すなば珈琲が鳥取に来ていただくきっかけになればいいなという思いが強くなったんです。なので、鳥取限定でやっていきたいなと。

お店の看板は陸前高田の「奇跡の一本松」の木で制作されたもの

 ただ、唯一の県外店舗が、岩手・陸前高田市にあります。東日本大震災が起きてすぐにうちが炊き出し支援を行っていまして、今も続けているんですけれども、高田松原の道の駅がリニューアルするときに、「すなば珈琲さんも入ってくれませんか?」とお声がけいただきまして。陸前高田だけは特別に運営させていただいています。

ーー素敵なエピソードです。

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村上 地域に根づいたお店を目指していますので、陸前高田とのご縁も大事にしていきたいですね。

「思い出の中にすなば珈琲があるのは、すごく光栄なこと」

ーー鳥取密着型のお店ならではのエピソードはありますか。

村上 そうですね……。2024年で開業10周年を迎えまして。ある時、お父さんと小学校ぐらいの男の子がいらっしゃって、レジで「ありがとうございました」って普通に会計をしてたら、お父さんが大慌てでスマホの画面を見せてきたんですよ。

 なんだろうと思って見たら、開業したばかりの1号店の前で「すなば珈琲」のロゴと一緒に赤ちゃんが写っている写真だったんです。お父さんが「あの時の子も10歳になりました」って言ってくださって、男の子も「10周年おめでとうございます。これからも頑張ってください」と。10年越しにまた来てくれたっていう、すごい……うん、これはめちゃくちゃ嬉しかったですね。忘れられないです。

ーー鳥取に根付いたすなば珈琲さんだからこそですね。

村上  誰かの思い出の中にすなば珈琲があるっていうのは、すごく光栄なことだなって思いますね。

おみやげコーナーも充実

すなば珈琲をきっかけに鳥取に来てもらえたら

ーー鳥取を歩けばすなば珈琲が見つかりますよね。空港にもありましたし、米子方面にも。

村上 今は県内に11店舗展開しています。うちはあんまり広告費が出せないので、みなさんが口コミで広げてくださったおかげです。

 

 鳥取で思いつくことって砂丘くらいかなって思うんですけど、食べ物もおいしいですし、道路も空いていて運転しやすいですし、いいところですよ! 「すなば珈琲ってあるらしいじゃん、鳥取行ってみようか」なんて、一つの選択肢に入れてくださったら嬉しいですね。

ーー実はプライベートではスタバによく行く、なんてことは……。

村上 (笑)。手前味噌ですが「うちのコーヒーはおいしいな」と思っているので、スタバに限らず、あえてほかのお店でコーヒーをいただくことはあまりないですね。行ったときは、フラペチーノとか、うちにはないメニューを頼んでいます(笑)。

撮影=深野未季/文藝春秋

 
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