当然のことながら、コロナ病棟に詰めている医師は、その期間本来自分の所属する病棟や医局への立ち入りを禁止される。それだけではない、コロナ病棟勤務を終えたあとの1~2週間は、基本的に自宅待機となるので、主治医としての担当患者から長期間にわたって離れなければならなくなるのだ。
高齢者や妊婦と同居している職員がコロナ病棟担当になると、感染防止のため自宅に戻れなくなることもある。病院によってはホテルの宿泊費を負担するところもあるが、これも積もり積もれば馬鹿にならない金額になる。
多くの貴重な労働力と医療資源を、長期間にわたって、わずかなコロナ患者のためだけに費やすことは、「医療機関の使命」としては当然のことでも、「経営」という側面から見れば大きな痛手なのだ。
新型コロナから地域を守るためには感染者を受け入れざるを得ないが、実際に受け入れている病院の経営者は「やればやるほど赤字が増える」と頭を抱えることになるのだ。
それでも「“地域医療構想”の実現のきっかけになる」
影響は、コロナ病棟以外の病棟や診療科にも波及する。大阪の民間病院に勤務する内科医はこう話す。
「2月に新型コロナの脅威が身近に迫った時点で、外来の患者数が劇的に減り始め、それにつられて入院患者も激減していった。それまで病床稼働率が90%台を維持していたのに、いまでは70%台、時には60%台まで落ち込むこともある。さすがに不安になります」
東海大学医学部付属病院泌尿器科准教授の小路直医師は、
「遠隔診療が可能になったとはいえ、リモートでは医療経営に寄与する処置や手術料は取れない」
としたうえで、今後の医療提供体制の変化をこう予測する。
「今回の新型コロナを巡る騒動は、全国の病院改変を加速すると思う。大学病院やがん専門病院ではコロナ感染者を受け入れない、地域の病院はコロナと診断したらすぐに感染症専門施設に送る、など、厚生労働省が以前から掲げてきた“地域医療構想”の実現のきっかけになると思う。民間病院の経営は一層厳しさを増し、公立や公的病院も統廃合の話が出てくるのでは……」