今選挙をやっちゃって大丈夫なの?
しかしながら、日本医師会もそんなことは百も承知で、コロナウイルスの感染症対策は徹底しなければならないという立場を取り、経営的にはしんどいながらも身を切る覚悟で緊急事態宣言をやらなければ国民の健康・生命を守れないと決断をしていたわけですよ。病院経営が全国的に悪化することは承知のうえで、国民にコロナウイルスの危険を周知したのです。
医師や看護師ら医療関係者の皆さんの使命・役割をよく認識していたからこそ、結果として世界的に見て日本は感染者数も死者数も非常に低く抑えられた、コロナ対策成功例と判断されることになりました。
これは、日本医師会をはじめとする日本の医療界の危機感の強さと、それを信じてきちんと外出自粛をし、感染症対策のために粛々とマスクをつけ、手を洗い、うがいを励行した日本人の勝利だと思うんですよね。気を緩めたら、また感染拡大しちゃうかもしれないけど。
翻って、この状況で日本医師会の会長選挙ですよ。幸か不幸か日本医師会をはじめ日本の医療現場や社会保障関連の政策を内外から見ることのできる私のような立場からしても、おいここでトップ人事を左右するような会長選挙をやっちゃって大丈夫なのかよ、というのは思います。ようやく嵐を抜けられるかもしれないぞ、というところで選挙をやっちゃって大丈夫なの?
横倉長期政権の日本医師会
もともと今回の会長選挙が騒がしくなった理由は、日本医師会の現会長・横倉義武さんが4期8年、もう次に譲ろうかと現副会長の中川俊男さんらに不出馬を伝えたからでもあります。しかし、いままでの横倉さんの会長としての実績や、担ってきた役割を考えると、横倉さんがここで禅譲するというのは穴が大きすぎるのは誰の目にも明らかです。言うなれば、穏やかな調整型リーダーである横倉さんが降りちゃうのは困ると、ほうぼうから強く慰留されて、やっぱり会長選出馬決行に翻意したわけですね。
横倉さんが2012年の日本医師会の会長選に勝ったときは、当時政権の座にあった民主党とべったりであった前会長に対して自民党との関係修復を主張しておられました。その後、安倍政権との関係を維持し、任期中は4回にわたる診療報酬のマイルドな引き上げをゲット。一方で、過酷な医療現場の改革にも着手し、AIを使った診療システムにもGOサインを出すなど、医療現場の負担を下げながらも診療の質を落とさない方針を堅持してきたことが、横倉長期政権の原動力になってきたのです。