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目の覚めるような野村佑希の活躍を、僕らは忘れないようにしよう

文春野球コラム ペナントレース2020

最高の場面を僕らは忘れないようにしよう

 僕らは忘れないようにしよう。最高の場面を記事に残す。今季の本拠地初勝利だ。ソフトバンク戦、△●と来た第3戦、追いすがっても追いすがっても1点ビハインドまでしか行けない試合展開。ジリジリする。スコア7対8で、とうとう9回裏になってしまった。マウンドには高橋礼に代わって森唯斗。

 近藤四球、中田ヒットで無死1、2塁。が、そこからがいけない。渡邉諒バント失敗、清宮1ゴロで2死2、3塁。今季は打線が弱いのだが、こういう当たり前のことができないのも低迷の一因になっている。渡邉がしっかり送っていれば、清宮は外野フライでもゴロゴーでもサヨナラじゃないか。

 2死2、3塁。捕手・甲斐がマウンドに駆け寄る。1塁が空いている。意思の確認だ。白いマスクをつけたコーチも出てきた。野手も集まる。打者は7番、野村佑希。今日、ホームランを打っているが、打率.194のバッターだ。森唯斗は勝負を選択する。

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“ジェームス”野村佑希は唇を結んで打席に立つ。バットを立てて構える。森はパで最高のクローザーだ。しかもこの勝負、カウントが面倒くさくなれば満塁にしてもいい。ピンチの場面ではあるけれど、精神的には見下(お)ろしていける。

 1球目、外のカットボール。これを野村は1塁側内野席にファウルした。野村は1球目から振れる。意識はインサイドアウト。

 捕手・甲斐は外角に意識をつけさせ、2球目思いきり内側に構えた。球種はストレート。森のパワーピッチ。これが甲斐の構えより真ん中に入った。野村は迷いがない。内側から叩く。打球は浅めに守ったセンターの頭を超え、ぐんぐん伸びてフェンス直撃。走者は2者生還して、9×-8のサヨナラ!! もうベンチがみんな飛び上がって、みんな飛び出していく。プロ入り初の大仕事をやってのけた野村をみんなでとり囲む。シビレチャッタヨネー。このときばかりはファイターズはソーシャルディスタンスを忘れてしまった。リアルハイタッチ! リアル頭ぽんぽん! あとで手洗い消毒だ。いやっほう!!

逆転サヨナラ二塁打を放った野村佑希

 ※この場面、僕はどこにいたかというと実は西武球場前駅のホームにいた。西武×オリックス3回戦を取材し、ガラガラの西武線で帰ろうとしていたのだ。さすが無観客試合ということで本数が少なかった。ホームで電車を待つ間、radikoで「HBCファイターズナイター」を聴いていた。そうしたら奇跡が起きたのだ。もう「ふぁぁ!!」とか、何だかわからない声を上げていた。で、ホームで2回、垂直跳びだ。まわりのライオンズの職員さんらしき女性が「ん?」という顔で見ていた。いい思い出だな。

えのきどはこの地点で野村佑希のサヨナラ打に酔い、ぴょんぴょん垂直跳びした。シビレチャッタヨネー ©えのきどいちろう

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