ずっと貼ってある付箋がある。番組でのコメントやスケジュールがコロコロと変わる私の仕事には、付箋はなくてはならないものだけれど、普段は長く付き合う相手ではない。でも、いま、ずっと私の手帳には同じピンクの付箋が貼ってあってこう書いてある。どうせすぐ剥がすからと雑に書いたシーズンオフ。
「西川せん手 うったら それはつーさん1000本」。ひらがなのバランスもおかしい。最初は3月20日に、その後は開幕がここかと噂される度に、その日付へと貼り替えてきた。粘着力、もう限界。
入団会見で印象的だったコメント
西川遥輝選手を最初に見た日を思い出す。2010年のドラフトの主役は1位指名の斎藤佑樹投手で間違いなかったけれど、早慶戦なども理由に彼は単独の入団会見を開くことが決まって通常会見では2位から6位までの選手が並んだ。当然、2位指名の西川選手は先頭となる。記者からの質問にも一番で答えていかなくちゃならない。
まだ線は細かったけれど、背筋を伸ばして堂々と答えるその姿は、もうその時からクールさを身に纏っていて、もうその時から自分の意志と言葉をしっかり持っていた。特に「ファイターズで初の盗塁王を目指したいと思います」というフレーズは印象的で、自分の良さを客観視しアピールするのもうまかったし、所属するチームをよく勉強していることに感心した。
2013年に陽岱鋼選手が獲得することで「ファイターズ初」ではなくなったけれど、2014年に初受賞、その後も合わせて3度の受賞はもちろんチームでは誰も成し遂げてはいない。
西川選手がメジャー挑戦を口にしたのは去年の契約更改だった。チームメイトだった大谷翔平選手の存在が大きかったという。早ければ早いほど、という言葉が出たので、2年契約が切れる今年のオフにもポスティングシステムでということになるのかもしれない。私は寂しいというより、そのチャレンジに心が躍った。アメリカ・メジャーリーグの大きな大きな選手たちの中にシャープな西川選手が走る姿を想像して早くも誇らしくもなった。そして気づく。ということは、西川選手の胸元のCマークが見られるのはたった1年かもしれないのかと。
キャプテン就任の報せはそれより少し前だった。プロ10年目でファイターズが北海道のチームになってから10人目のキャプテン。同じ数字が揃うのはいつだってちょっとうきうきするけれど、西川選手のコメントはもちろん引き締まったものだった。
「姿で鼓舞できるようにやっていきたい」
これを象徴するようなシーンが開幕前にあった。