開幕にあたり謹んでご挨拶申し上げます!

 突然ですがみなさんは「オリックス」と聞いて何を思い浮かべますでしょうか。僕の調べでは一般人が思い浮かべるオリックス関連ワードは「イチロー、レンタカー、ブルーウェーブ」となっております。文春オンラインで野球コラムなどを読んでいるマニアのみなさんですと「イチロー、山本由伸、吉田正尚」あたりでしょうか。しかし、僕は違います。今年から違います。今の僕が「オリックス」と聞いて思い浮かべるのは「イチロー、高配当、カタログギフト」です。

優待目当てで購入した西武株はコロナショックで……

 おわかりの方もいるでしょうが、私、オリックス(8591/銘柄コードです)の株主様であります。オリックスの株を100株以上買いますと、毎年3月末にはふるさと優待と題したカタログギフトを株主優待でもらうことができ、9月末にはプロ野球観戦やレンタカーが割引料金で利用できる株主カードをもらうことができるのです。そうしたお得な優待に加えて利回り5%にも及ぶ配当金もいただけるということで、オリックス株は個人投資家の間で人気筆頭の株となっています。おそらくオリックス・バファローズファンの数よりもオリックス(8591)の株主の数のほうが多いでしょう。個人株主が50万人くらいいるらしいですから。オリックス・バファローズ公式ツイッターのフォロワーは34.1万人なのに!(2020年6月19日現在)

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 老後の資産形成を見据え、投資に目覚めた2020年。長期積立のインデックス投信に軸足を置きつつも、優待や配当狙い、そして何よりも「株主様」というステータスを求めていくつかの個別株も購入を進めておりました。そのひとつが「みんな大好きオリックス株」であったわけですが、もうひとつ所有した株があります。それが西武ホールディングス(9024/銘柄コードですよ)の株です。

 何も考えずに「だいすきなせいぶらいおんずのかぶ」を買ってしまった半年前の自分。今は半年前に戻って自分をひっぱたきたい気持ちでいっぱいです。2020年2月7日に1863円の年初来高値をつけた西武株は、コロナショックとともに暴落し、2020年4月1日には1126円をつけ上場来安値を大幅に更新するに至りました。プロ野球公式戦のチケットがもらえるという優待目当てで購入した西武株は、購入時の価格にいまだ戻ることなく大きな含み損を抱えています。チケットは普通に買ったほうが絶対によかった。

 優待でもらった公式戦のチケットは、おそらく使用機会がないでしょう。お客が入場できるかどうかもまだ不透明ですし、株主様への還元なのに「売切御免」の設定らしく、入場者数を制限してのソーシャルディスタンス観戦においては出番はなさそうです。やらないゴルフの優待券、予定皆無の結婚式の優待券、あるだけマシ程度の配当、よくよく考えたら何で西武株を買ってしまったのか自分でも意味がわかりません。せめて安くなってから買い叩くべきでした……。

内野指定席Sと換えられる優待券。いつ使えることやら……。

 このように「株主様」として見る西武は、これまで見ていた西武とはまた違った存在でした。今まではプロ野球・埼玉西武ライオンズのことだけを考えておればよかったわけですが、西武グループ全体におけるライオンズ事業の割合はたかだか数パーセントに過ぎません。西武グループは西武鉄道による都市交通・沿線開発と、ホテル・レジャー業が2本軸の企業グループであり、そのなかでもエースで4番で企業アイデンティティであるのはプリンスホテルなのです。

 西武線の業績はコロナ禍があろうがなかろうが大して変わらないんじゃないかという気もしますが(もともと人が大して乗ってない)、プリンスホテルの業績はコロナ禍の直撃を受け、東京五輪の延期によってワンツーパンチを浴びた状態。本業がノックダウンでは株価が上がるわけがありません。他球団の親会社を見渡しても「新聞、ゲームのガチャ、阪神が本業、市民球団が建前、地方新聞、ヤクルト販売、一応電話、一応通販、菓子販売、ハム販売、レンタカー?」と西武ほどにコロナ直撃を受けた企業はありません。西武だけがガツンとボコンとやられている。株主様視点で見る今季の埼玉西武ライオンズはまさに存亡の危機。苦境のプリンスホテルを何とかせねば西武ホールディングスの未来はなく、すなわちライオンズの未来も株価のプラス転換もないのです。

 そして株主様となった今ならば2013年に米投資ファンドのサーベラスグループが西武株のTOB(株式公開買い付け)を行なった際の「ライオンズの売却」「西武秩父線の廃線」という腹案についても理解できます。ライオンズの本拠地・埼玉県にあるプリンスホテルの物件は川越にある川越プリンスホテルと、西武ファンもわざわざ宿泊はしない西武ゆうえんち横の中国割烹旅館掬水亭の2軒。西武秩父線で秩父くんだりまで運ばれても泊まる宿があるわけではありません。それであればちょうど今年話題となった「としまえん売却」のように、売れるものは売ってしまったほうがいいという考えも生まれるでしょう。結果として、人情や沿線事情を顧みない腹案は株主の反感を買ってTOBは失敗に終わったわけですが、考え方としてはアリだなと思います。シナジーの薄い部門を整理して、プリンスホテルへの「選択と集中」を考えるならば。むしろ株価は上がりそうな気がします。

2015年から2016年シーズンには球場名称を「西武プリンスドーム」としてシナジーを発揮したこともあったが……。