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「コード・ブルー」「ドクターX」……大人気・医療ドラマの手術シーンは実際とココが違う

名医の手術を数々取材してきたジャーナリストが目撃したナマの現場とは

2017/08/30
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その三。手術室を上から見下ろせるような窓は見たことがない。

 医療ドラマではよく、いじわるな上司やライバルの医師が、手術室の天井近くに設けられた上階の窓から、主人公の手術の様子を監視するように見下ろすシーンが出てきます。

 しかし、いろんな大学病院や有名病院で手術を見学しましたが、そんな手術室は見たことがありません。実際にどこかに存在するのかもしれませんが、たいていの病院の手術室はビルのワンフロアに並列しているので、ツーフロアをぶち抜いて上から見下ろせるような構造にはできないと思われます。それに、手術室には出入りするドア以外、内外から見通せる窓はありません。

第三者が手術を見るならモニターを見るほうがよくわかる

 そもそも、第三者が手術を見るのに上の窓から見下ろすなんて、時代遅れではないでしょうか。というのも、脳であれば顕微鏡を使った手術、がんであれば内視鏡カメラを体内に挿入して行う胸腔鏡や腹腔鏡の手術が普及したからです。そうした手術では、カメラに映った術野の様子が、手術室内のモニターに大きく映し出されるようになりました。

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手術の様子はモニターに大きく映し出される。手術中の渡辺医師 ©三宅史郎/文藝春秋 (協力:国立がん研究センター)

 上の窓から肉眼で見下ろしても、執刀医が何をしているのか、遠すぎてよく見えないはずです。それより、手術室の中に入ってモニターを見たほうが、映像が拡大されているのでよくわかります。上司がスタッフの手術をチェックできるよう映像を飛ばして、医局などに設置したモニターで見られるようにしている病院もあります。

 主人公の手術を上から見下ろす人がいたほうが、ドラマの演出としては都合がいいので、そのような窓のある手術室のセットが好まれるのでしょう。ドラマにはドラマの面白さがありますから、その演出をくさすつもりは毛頭ありません。

手術を終えた渡辺医師 ©三宅史郎/文藝春秋 (協力:国立がん研究センター)

 ただ、現実とはかなり違う面があることが、お分かりいただけたのではないでしょうか。医療ドラマはあくまでフィクションです。作り事だからこそ、ハラハラ、ドキドキがあって面白い。ご自身やご家族が実際に手術を受けるとしたら、ドラマとは異なる現実があることを理解しつつ、フィクションはフィクションとして楽しむのが一番いいのではないかと思います。

 では、現実に手術を受けることになった場合、どんなポイントで、外科医や病院をどう選べばいいのか。次回は、それについて書いてみたいと思います。

「コード・ブルー」「ドクターX」……大人気・医療ドラマの手術シーンは実際とココが違う

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