この時期、肌を守るために「日焼け止め」を使用している人が多いだろう。確かに太陽光に含まれる紫外線は、皮膚がんのリスクを高めることがわかっているし、肌のハリを保つコラーゲンを破壊し、シワやシミなどの老化の原因にもなる。最近の傾向として大気中のオゾン層の破壊から、紫外線に当たることを避ける人も多くなった。日本皮膚学会でも外出時には、日焼け止め製品を使うことを推奨している。

 しかし一方で、日焼け止め製品の身体への影響についてはわかっていないことが多い。

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日焼け止めに含まれる化学物質が血液中に吸収

 昨年、FDA(アメリカ食品医薬品局)は「日焼け止めを皮膚に塗った時、予想以上に多くの成分が体内に吸収されている」と発表した。

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 米国で健康なボランティアを募集し、一般的な日焼け止め配合成分が含まれる4製品について臨床試験を行うと、どの成分もFDAが基準とする0.5ng/ml(FDAががんリスクを増加させないための血漿濃度の閾値と設定している数値)を超えていたのだ。その結果は米国医師会雑誌『JAMA』に掲載された。

 美容医療や東洋医学を取り入れた皮膚科治療を行う吉木伸子医師(よしき皮膚科クリニック銀座院長)はこう話す。

吉木伸子医師

「これまでこうした日焼け止めに含まれる化学物質は皮膚の表面にとどまり、体内にはそれほど吸収されないと考えられてきました。しかし実際は皮膚を通して血液中に多く吸収されていたのです。それがすぐに危険であるとは言えませんが、ものによっては3週間もの間、血中に残存することがわかってきました」

 日焼け止めが日常的に使われ始めたのは30年ほど前のこと。当時、どのくらいの量が皮膚に吸収されるかについての実験が行われ、その数字をもとに日焼け止めの安全性がはかられてきた。

「30年前は“小麦色の肌の女性”が賛美され、毎日日焼け止めを塗るという習慣はありませんでした。それが今は子供も含めて多くの国民が一年中使用している。それを踏まえてFDAは、人体への安全性を再度見直す必要があるとしたのでしょう。現在米国では16の物質が日焼け止め成分として認可されています。最近になって実験の見直しが行われ、『酸化亜鉛』と『二酸化チタン』の成分のみが安全で確実に紫外線を防ぐと認められました。FDAは、そのほかの成分については安全で有効であるかの検証を再度行う必要があるとしています」(吉木医師)