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7月24日、東京五輪開幕だった日、柳田悠岐のホームランに思いを馳せる

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/07/24
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好ゲームに決着をつけた感動的な一発

 ただ、印象深いホームランを挙げるならば、やはり7月10日のイーグルス戦(PayPayドーム)で放ったサヨナラ本塁打だろう。

 この日、プロ野球の球場にファンが戻ってきた。歓声を上げるのはまだ自粛。だけど、拍手だけでも想いは十分に伝わってきた。

 1対1で延長戦に突入した好ゲームに決着をつけた10回裏の一撃は、やはりバックスクリーン左への特大のホームランだった。

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 あれから2週間が経つが、脳内映像で再生すると鼻の奥がツンと熱くなる。

 本当に、感動的な一発だった。

「無観客でやっていたからこそ、ファンの人たちがいて拍手をもらえるだけで全然違うなと思いました。たぶん、一生忘れることはないと思います」

 普段は明るい柳田だが、最近はこと野球になるとクールな取材対応が目立つ。どんな活躍をしても「自分のスイングをするだけです」。それは偽りのない本音だが、経験の浅い記者などはよく肩透かしにあっているようだ。

 ただ、「一生忘れることはない」と言ったときの表情は、いつもと全然違って見えた。

 柳田がプロとして、ひとりの主力選手として、こだわり続けていることがある。本塁打数や打率などの個人成績よりも、試合に出続けることを大切にしているのだ。

「球場には何万人のファンの人が来てくれる。僕らにとっては何百分の一の試合かもしれないけど、その中にはこの1日しか球場に来る事が出来ない人もいると思う。その人がもし僕のファンで、僕が出ていなかったらガッカリしてしまう。プレーできる程度の痛みであればグラウンドに立つ。それがプロです」

 満員のスタンドにぶち込みたいんですよね、と開幕前には話していた。それはもう少し先になりそうだが、運良く球場に来られたファンもテレビなどを通じて応援するファンも、柳田のホームランに胸躍らせながらプロ野球を楽しんでいる。

 1年延期が決まっている東京五輪。野球競技のスタートは同じく福島で、日程は1日早まって7月28日に初戦を迎える予定だ。

 やはりオリンピックの舞台に柳田悠岐は必要だ。来年の夏は金メダルを口にくわえて、大はしゃぎする姿を是非楽しみにしている。

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