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“Wシンタロウ”でのお立ち台が夢だった……元阪神・横田慎太郎が語る藤浪晋太郎の“凄み”

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/08/25
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 先日、久しぶりに甲子園球場に行って来ました。OBの川藤幸三さんが開設するYouTubeチャンネルに出演することになって、そのタイミングで「甲子園に来るか」と言っていただきました。試合前の練習を見学させていただいたのですが、矢野監督、コーチの方々、そして選手のみなさんにも次々に声をかけていただいて、すごく嬉しかったです。

 その中でも福留さんには練習中にも関わらず足を止めてもらって、長い時間お話させていただきました。「体大丈夫か」「変わったことないか」とか僕のことを気をかけてくださって、その時、鹿児島の豪雨の直後だったので、そちらの心配もしてくれて。本当にありがたかったです。 

 先輩、後輩、歳の近い選手はいつも通りのイジりでしたね。江越さんには「ニートやん」とか言われて(笑)。今、ダイエットして12キロぐらい痩せているんですが、北條さんには「ほっそ」と笑われてしまいました。でも、チームにいた時の空気を久々に味わえた気がして楽しかったですね。何より、甲子園はあらためて綺麗で、良い球場だなと思いました。引退したのに、球場に入れてすごく幸せな気持ちに浸ることができました。

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次元が違った“シンタロウさん”

 話は変わりますが、今回はここからが本題です。“シンタロウさん”の笑顔に胸が熱くなりました。藤浪さんが21日のヤクルト戦で2年ぶりに白星を挙げました。鹿児島でテレビ中継は無かったのですが、ネット速報をずっとチェックして結果を気にしていました。その後、ニュースでも試合の映像を見ることができて、藤浪さんの明るい表情が印象的でした。僕は病気でしたけど、藤浪さんは野球のことでいろいろ苦しんで、野球以外のことでも、周りの人にいろいろ言われて辛い思いもしてきたと思います。でも、もう一度、マウンドでああやって結果を出されて、偉そうなことは言えないですが、今まで悩んできた分が少し報われたのかなと思うと、僕もほっとしました。本当に良かったな……と。

横田慎太郎と藤浪晋太郎 ©スポーツニッポン

 藤浪さんは、1歳上の先輩なんですが、高校時代からスター選手で自分にとっては大げさではなく、雲の上の存在でした。1年後に僕がタイガースに入団したんですけど、最初は“あの藤浪さんがいる”となってほとんど喋ることはできなかったですね。当時は藤浪さんは1軍でバリバリ投げられていて、僕は2軍。1日のスケジュールも全然違うので、寮で会うこともほとんどなかったんです。会っても、めちゃくちゃ緊張してほとんど話せなかった。話せるようになったのは、僕が1軍にいった16年ぐらいからで、その後、藤浪さんが2軍に来てよく声をかけてもらいましたし、イジったりもされました。ただ、藤浪さんの名誉のために言うと、北條さんや中谷さんみたいな激しいイジりではないです。あの人たちとは質が違います。愛のあるというか、ソフトなイジりでしたね(笑)。

 17年に僕が沖縄のキャンプを病気で離脱する前、最後に出た試合だった紅白戦で藤浪さんと対戦しました。あの時もえげつないボールを投げてました。マウンドとバッターボックスがこんなに近く感じたことは今までなかった。空振り三振だったんですけど、こういう投手が1軍で活躍するんだなと、打席で痛感した記憶がありますね。自分も体は小さくはないんですが、藤浪さんのデカさは次元が違うんですよね……。今だから言いますが、打席で怖かったです。メッセンジャーも大きくて威圧感はあったんですが、藤浪さんはまた違うんですよね。迫ってくる感じがして。

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