東京ヤクルトスワローズ広報部の三輪正義です。前回の登板で初めての敗戦を喫し、大変悔しい思いをしました。「調子に乗っていると足をすくわれるぞ」と現役時代はいつも自分を戒めていましたが、その気持ちを思い出しました。では、気を引き締めて参ります。

 悔しいといえば、チームはあれよあれよと最下位……投打が噛み合わなかったり、ケガ人も出たりと、暗いニュースばかり。そんなか、僕の古巣である独立リーグ「香川オリーブガイナーズ」に所属していた元阪神の歳内宏明投手が、わがスワローズと契約し、入団しました。初登板となった9月9日の2軍のベイスターズ戦では6回を被安打3、無失点と期待通りのピッチングを見せ、1軍に昇格。今日(9月16日)神宮のマウンドに上がり、最下位脱出の希望となろうとしています。しかも今日は「TOKYO燕プロジェクト」といって緑のユニフォームを着る日。香川のユニフォームも緑。緑に縁があるんでしょうから好投を期待しています。

 実は、香川の監督の近藤智勝さんは、僕が香川時代、二遊間を守りコンビを組んでいた先輩。その近藤さんから「歳内をよろしく。どんどんメディアに出してやってくれよ!」とさっそく連絡をもらいました。

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 独立リーグというのはNPBとは違って、食事の用意もユニフォームの洗濯も自分でやらなければいけない厳しい環境。歳内投手もNPBとの違いに驚いたはずです。でも、そんな経験というのは、選手生活や今後の人生のプラスになるのではと思っています。独立リーグからNPB入りし、初のFA権を獲得した元選手としては、“ナントカ風”を吹かせたいところ。歳内投手にすかさず突撃し、スワローズのユニフォームに袖を通した気持ちや、その素顔を球団公式サイトの動画コンテンツ「FOCUS ON PLAYERS」でお届けできればと思っています。歳内投手、人見知りの僕ですが、ご協力お願いします!

尊敬する仕事の先輩は27年目の「だいべてらん」

 上にあげたように、僕がいま力を注いでいる仕事に、公式サイトの「動画コンテンツ」の充実があります。パソコンと連動させた最新鋭のスマホを使って、さまざまな企画をひねり出していますが、煮詰まることもしばしば。そんなとき、僕は「広報の先輩」に相談に乗ってもらっています。

 その先輩とは、鳥なのに僕よりスマホを巧みに扱う、今年で27年目「だいべてらん」のマスコットです。

27年目「だいべてらん」のマスコットと筆者 ©三輪正義

 野球離れが叫ばれるなか、スワローズでは小学生にボールの投げ方を教える教室を開いています。僕も小学校を訪問しては、体育の授業で子どもたちに「投げ方」をレクチャーする役を仰せつかっているのですが、このコロナ禍ですから、誰でもどこでもその授業が受けれるように「YouTubeを使った投げ方教室動画」を作ることになりました。

 この動画を作る際、どうしようかと悩み、いろいろとイメージしました。画面の中には元プロ野球選手のおっさん。投げ方を身振り手振り説明しているが、技術的なことに終始してたどたどしい。面白いこともさほど言っておらず、見ている子どもたちは飽きてしまう……「これはマズイ」。そう思ったとき、ポッと頭に浮かんだのはあの先輩の大きな顔です。

 オファーをすると先輩は動画出演を快諾してくれ、撮影に臨みました。投げ方教室にはマニュアルがあるのですが、僕がコーチ役となり、先輩にもそのとおりやってもらいます。「投げるときは目線を上げて。いいね、いいね、上手だね!」と褒めていると、地面にボールを思いっきり叩きつけてしまっている。「目線を下げちゃだめ! 話聞いてた?」とツッコむと正しくボールを投げます。これが実にいいテンポ。先輩がダメな例を見せ、僕が正しい方法を示す。画面は抜群の安定感。近日公開になるので、楽しみにしていていただきたいのですが、先輩が画面に映り込んだだけで「この企画は成立したな」と思っています。

 現役時代はクラブハウスを出て、球場へと続く荒木トンネルをくぐって、ライト側通路から神宮のグラウンドに出ると、そこでいつも待っていてくれる先輩とわちゃわちゃ絡むのが常でした。でもそれはほんの短い時間。まさか僕がユニフォームを脱いでから、長い時間を過ごし、なにかとお世話になるとは思いませんでした。

 先輩は押しも押されもせぬチームの顔。先輩が東京ヤクルトスワローズをアピールしてきたと言っても過言ではありません。SNSがこんなに盛んになる前から、地上波のテレビ番組に出て、朝から野球中継の宣伝をしたり、特番では、名だたるレジェンドをタジタジにさせるツッコミを入れていたり。現役時代も「そんな返しをするんだ……」と恐れつつも、勉強になるなと思って見ていたことを覚えています。全国放送のインパクトはすごいですね。僕の地元である山口の知り合いのおばちゃんもヤクルトスワローズのことはほとんど知らないのに、「つばちゃん」と先輩のことを呼んでいたほどです。