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外資系企業のあのしんどさは経験した者でないとわからない

 翻って日本企業の競争力、組織の中でのヒトの力を考えてみる。歴史を紐解いていくとこの国のあり方が分かる。

 平安時代、日本は中国の官僚制度を真似て国造りを行ったが、ある重要な制度を取り入れようとしなかった。科挙である。人材登用を試験による実力主義としなかったのだ。“競争を嫌う”という日本人の本質は平安時代に既にはっきりと現れている。

 私自身、厚遇の外資系を辞したのは日本企業からの破格の条件での招聘があったこともあるが、「外資系での毎日がしんどい」ことがあったのも事実だ。毎日が競争であり、仕事の結果が常に求められるだけではなく、組織内の競争で一瞬たりとも気が抜けない。カネで割り切ることの出来ないあの“しんどさ”は経験したものでないと分からない。

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日本人は「伝書鳩民族」

「たしかに日本人というのは、この国がイヤになったから外国へいってやるというふうにはいかん民族ですね。たとえば戦後ずいぶん向こうへ留学生がいったけれども、ほとんどが帰ってきてますよ、まるで伝書鳩みたいにね(笑)」(高坂)

「室町末期の倭寇を考えてみても、せっかく激しい戦闘をやって中国や台湾沿岸を占領しても、そこに住みつかずに日本に帰っちゃう。民族性ですな」(司馬)

「伝書鳩民族ですよ(笑)。いずれはちゃんと帰ってくる」(高坂)

これは今から五十年近く前、昭和四十五年四月に行われた司馬遼太郎と高坂正堯との対談(『司馬遼太郎対談集 日本人を考える』文春文庫)だが、ここでもその本質が語られている。

 日本人は競争が嫌いなのだ。

 では今、そんな日本人を企業はどのように「競争力」にして世界と戦っていけばよいのか? 競争が嫌いな日本人を競争力として活用できたとき、真の日本企業の強みが発揮できる。欧米型の雇用形態、企業形態をゴリ押しで日本人に適用する方法もあるが、それではさびしい。そこに解はあるだろうか?

 新興企業の中に、新たな一つの解を出している企業がある。次回はその「新しい解」について論じる。

※「日本人の「競争嫌い」を逆手にとった『ZOZOTOWN』の異色さ」に続く