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プロ6年目、一軍出場なし…ホークス・古澤勝吾に3人のコーチが伝えたこと

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/10/19
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 松山コーチは「素早く動けないとショートは無理」と厳しく叱咤激励。古澤選手自身は、まずその現状を打破するために考えを改めました。高校時代、打撃を評価されてプロ入りしたため、根底には「打たないと意味が無い」という思いがありましたが、守備に起点を置いて深く取り組むことを決めたのです。

 そうすると、様々な事が変わりました。それまでは、打力向上のためにウエイトトレーニングを頑張り過ぎて身体はムキムキでしたが、それが俊敏な動きを妨げていることに気付かされました。松山コーチに「動きやすい体重を見つけろ」と言われ、日々身体と向き合ってきました。85~86kgあった体重を現在は77~78kgでキープしています。パワー系トレーニングから動ける身体にするためのトレーニングに重点を置くようになりました。神経系を鍛えるトレーニングも学んで取り組み、身体の動きにも変化が表れてきました。コツコツ取り組んできた様々なことが実を結び、結果に繋がってきているのです。

川瀬選手と松山コーチの特守を受ける古澤選手 ©上杉あずさ

アスリートとして、人として、大きな進化を

 育成再出発からもうすぐ2年。来季以降の契約にピリピリする季節がやってきますが、古澤選手はそれに委縮したり不安になったりすることはありません。自身の評価を決めるのは球団。自分が不安になっても仕方ないのだから、後悔のないように自分に出来ることを一生懸命やるのみ。結果が出なかったり、上手くいかないときでも「うわ~アカン!と思うとその後のプレーに影響が出てしまうんで。そういう経験できて良かった~と脳内で全部プラスに変換するんです」と元々ポジティブの古澤選手ですが、その前向きさにも拍車がかかっていました。でも、ただひたすらに前向きなだけではありません。熱さを持ちながらも自分自身を俯瞰し、冷静にマインドコントロールしているのだと話している姿から感じられました。

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 この成長は、育成再出発して過ごしてきた3軍での経験が生きていました。自身の進化に「(吉本)亮さんとの出会いが大きかったですね」と古澤選手は言います。吉本亮3軍打撃コーチは選手達に野球ノートを書くことを勧めていました。中でも、本能型で生きてきた古澤選手には、毎日少しでも自分と向き合う時間を持って欲しかったと振り返ります。練習に取り組む姿勢は以前から一生懸命でした。だからこそ、自分とじっくり向き合うことで更なる成長に繋がるはず……。3軍での日々を経て、古澤選手は今まで読まなかった本を読むようになったり、新しいことに興味を持ったり、「いろいろ知りたい」と思うようになったと言います。自分を知ったことで、様々な面で視野が広がってきたのかもしれません。

 自分の身体を知ること、そして自分自身を知ることで見える世界が広がってきた古澤選手。自分を知れたからこそ、心の安定を自らコントロール出来ているように感じます。アスリートとして、人として、大きな進化を遂げているのだと感じました。

 プロ入り6年、時間はかかってしまったけど、現在の境地に達した古澤選手は最強だと思います。今季の支配下登録期限は過ぎてしまいましたが、望みが繋がるのならば、私は彼が辿り着く先の未来を見てみたいです。右肩上がりしか感じません。真の強さを得た古澤勝吾選手にこれからも期待し、応援し続けます。

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