ホークスとマリーンズの優勝争いがし烈です。直接対決が終盤戦に2カード計6試合も残っているため、最後の最後までもつれることは覚悟しています。
だからこそ直接対決では負けちゃいけない。しかし、9月25日のZOZOマリンスタジアムではホークス今季最悪の5連敗(引き分けを挟む)を喫してしまいました。それでも26日は周東佑京選手の3安打4打点の活躍もあってやっとの思いでトンネルを脱出。さぁ優勝争いの目下のライバルを引き離すぞ、と勢いづこうとした矢先に私たちは悪夢のような光景を見てしまうことになりました。
27日のマリーンズ戦。先発した二保旭投手が2回持たずに7失点で降板となりました。打線も追い上げましたが、序盤の失点が響いて4対8で敗戦。3カード連続負け越しに加えて、マリーンズ戦に限れば開幕から4カード連続負け越しという本当に悔しい結果になってしまいました。
二保投手は翌日に2軍落ち。今季は何度か登録抹消されたこともありましたが、それは登板間隔を空けてコンディションを整えるのが目的でした。ただ、今回は“降格”的意味合いの登録抹消であることは私にもわかりました。
「さすがに心が折れてしまった……」
千葉の悪夢から3日後、ファーム取材のために筑後に行くと、そこには二保投手がいました。声を掛けると、あの日のことを話してくれました。
「力の差をものすごく感じた。俺ってこんなもんなんやって……」
こんなにも心が折れたのは初めてだったと胸の内を吐露。ハートの強さが持ち味の二保投手だから、その言葉と表情に私もショックを受けてしまいました。
決して調子も悪くなかった中で、「あんな滅多打ち食らって、さすがに心が折れてしまった……どうしたら抑えられるんだろうってわからなくなってしまった」。二保投手に似合わない弱気な言葉にこちらも掛ける言葉を失いました。
二保投手は今季がプロ12年目のジャスサー世代(ちょうど30歳)。もともと育成選手でホークスに入団して、ファームで努力と実績を積んで現在の背番号13を勝ちとりました。それが報われたのが2015年。自己最多の44試合に中継ぎとして登板し、プロ初勝利を含む6勝、5H、11HPと結果を残しました。
ところがその翌年、右肘の内側側副靱帯再建術(トミー・ジョン手術)を受けました。投手にとって大事な商売道具である肘にメスを入れ、大きな不安を抱きながらリハビリに取り組んできました。
長く苦しいリハビリの中、ようやくボールを投げられるようになった時。
しかし、それは希望が絶望に変わった瞬間だったと振り返ります。
「自分が投げた球に愕然とした」
まるで自分の肘ではなく、変わり果てた自身の投げる球に落ち込んだそうです。その時に比べたら、今は投げられるだけでも幸せなのかもしれません。だけど、二保投手にとって今回の出来事は、その時と同じくらい大きな挫折だったのです。
しかし、まだシーズンは終わっていません。
大きなショックを受けながらも、「野球やらせてもらってる以上、責任もってやらないと」と前を向き直し、悪夢の先発から中5日で2軍戦のマウンドに立ちました。このマウンドには、自ら相当なプレッシャーをかけて臨みました。
「1軍で打たれて2軍に落ちてきた投手は、2軍でも打たれてしまうことが多い。ここで打たれたら、もう二保は無理だ、もうやる気ないんじゃないかって思われると思う。2軍を舐めてるわけじゃないけど、ここで打たれたら絶対ダメ」