三十路という分岐点は老いではなく、次のステージ
10月3日のウエスタン・中日戦。二保投手が自分の持ち味をいかんなく発揮。ゴロを打たせて少ない球数でアウトの山を築き、9回104球、3安打無四死球の完封勝利を挙げたのです。
まさに有言実行のマウンドでした。
「2軍に落ちてきて一発目の登板だし、いろんな目で見られると思う。どうしても抑えたかった。気持ちの切り替えも出来ていたし、結果として見せたかった」と試合後の二保投手。自らかけたプレッシャーにも打ち勝ち、強さを見せた登板になりました。
「でも、2軍相手だろ?」と思う人もいるかもしれません。確かにあくまでも2軍なのですが、味方も2軍で奮闘中の若鷹たち。この試合でも味方エラーや連係ミスなどでランナーを背負う場面もありましたが、冷静にゴロを打たせる二保投手らしい投球で0に抑えました。三塁手のリチャード選手が5回と7回にエラーをしてしまいました。泣きそうな顔をしていたという後輩に「もう一回打たせるぞ」と声を掛けると、次の打者を宣言通りの三ゴロに打ち取り、リチャード選手も今度はしっかりアウトを取りました。後輩のサポートも欠かさない逞しさを感じました。
倉野信次ファーム投手統括コーチは「1軍では良かった部分と悪かった部分がハッキリしたけど、去年より良くなっているのは事実。育成の頃から見ているけど、成長したなと思う。ここまでの経験は二保にとって大きなもの。何とかもう一度、1軍の先発を勝ち取って欲しい」と熱を込めて話してくれました。技術も含め、自分の弱さを目の当たりにしたこの経験が、自分自身としっかり向き合えるキッカケになるのではないかと教え子のさらなる成長を望んでいました。
今季、プロ入り後初めて先発一本で戦っている二保投手。先発投手としてやっていく以上、掲げた目標は「2桁勝利」か「規定投球回」。
「今年は0か100。先発として求められるこの目標を達成出来たら100、出来なかったら0。だから、現状の自己評価は0。今までで一番情けないシーズン」
先発ローテーション入りし、今までで一番注目も集まり、奮闘しているシーズンに見えますが、本人の自己評価は厳しいものです。でも、それは倉野コーチも言うように成長したからこその決意、そしてチームの勝敗を背負う責任感の表れではないかと思います。
「ずっと1軍で投げてきた人、出続けている人はすごい」
開幕から必死に食らいついてきて、改めて身をもって感じたそうです。二保投手が2軍で完封した日、1軍では同い歳の東浜巨投手が先発していました。8回途中に本塁打を打たれて降板するまでは完封ペース。今季6勝目を挙げました。
共に今年30歳のシーズン。三十路という分岐点は老いではなく、次のステージ。そんなことを思わせてくれる二保投手の奮起に力をもらいながら、近き日の1軍でのリベンジを心待ちにしています。
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