「正直、JOCの発表した施策には唖然としました。ファンがアスリートを応援するのは、彼らが日々厳しいトレーニングを乗り越え、目標に向かって努力を積み重ねる姿を目にするからです。高い目標に向かって必死で戦う彼らだからこそ、応援する気も生まれる。なのに、選手のスキャンダルで騒がしくなっているこのタイミングで、まさかゲーム配信とは……」
そんな風にぼやくのは、スポーツ紙の五輪担当記者のひとりだ。
「東京五輪への機運を盛り上げるとして先日JOCが提案したのが、『選手たちによるゲーム動画の配信』でした。ゲーム会社のセガによる東京五輪の公式ゲームを使い、アスリート同士が対決。それをJOC公式チャンネルで配信するという施策です。前回の東京五輪を意識して、10月10日から配信をスタートするようです」(同前)
陸上競技の桐生祥秀(日本生命)と小池祐貴(住友電工)の100mでの対戦や、シドニー五輪の柔道100kg級金メダリストの井上康生氏と同100kg超級銀メダリストの篠原信一氏による対戦などがゲーム内で行われるという。
現在のアスリートたちに対する‟逆風”
今、日本の五輪代表候補選手をめぐる状況は決して芳しいものではない。
日本競泳界のエースであり、来る東京五輪の“顔”でもあった瀬戸大也選手の女性問題に端を発した騒動は、いまだに各所に大きな影響を及ぼしている。9月30日には瀬戸サイドが自ら申し出る形で、JOCの「シンボルアスリート」からも外れた。所属企業だったANAとも契約を解除し、競泳日本代表主将の辞退も申し入れた。
そんな騒動の余波は、アスリートたちを束ねる立場のJOCにも波及している。
「瀬戸選手の一報があった直後に行われた定例会見では、山下泰裕JOC会長にその件についての質問もいくつか出たんです。でも会長は『事務局で把握したばかり。まだ瀬戸君からは何の報告もない』とコメントを濁すばかりで、『他のアスリートを含めてこういった事態がないように襟を正すべき』といった言葉は出てきませんでした」(同前)
その後、事態が明確になってからも「イチから出直してほしい」というばかりで、アスリートたちへ厳しい言葉をむけることはないのだという。
「むしろ過去に同様にスキャンダルを報じられたバドミントンの桃田賢斗(NTT東日本)や柔道の大野将平(旭化成)の例を引いて、マスコミの報道姿勢に疑問を呈すようなニュアンスもありました」(同前)