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 新型コロナウイルスの影響を受けて異例の延期となった東京五輪には国民感情として、その是非も含めて様々な意見が出ているのが現状だ。柔道66kg級の代表選考となるはずだった12月のグランドスラム東京の中止も決定され、競技ごとにも影響はいまだに出続けている。今月には五輪のスポンサー各社による会議も予定されており、来年の開催へ向けてまさに重大局面を迎えている。

瀬戸と山下会長 ©文藝春秋

「五輪スポンサーの契約期間は本来、今年12月末までの予定でした。組織委は各社と個別に交渉をしていますが、どの企業もコロナの影響で大打撃を受けており、簡単に延期の追加費用を工面できる状況ではないと思います」(広告代理店関係者)

 そこへ来ての看板選手のスキャンダル――全体の機運を見ても、一連の報道は大打撃だった。だからこそ、この時期にいかに嫌な流れを振り切り、東京五輪に向けて盛り上がりを作るのか。そして、選手に対するファンの思いを高める施策を打てるかが問題となっていた。

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ファンがアスリートを応援する理由は……

 ところがそんな折に山下会長はじめとするJOCが打ち出した施策には、冒頭のように周囲から驚きの声が上がっている。

1984年にはアマチュアスポーツ選手初となる国民栄誉賞を受賞 ©文藝春秋

「ファンは選手たちが五輪という高い目標に向かって一生懸命、努力する姿に心を打たれて応援するんだと思います。決してテレビゲームをする彼らを応援したいわけではない。もちろんこういった柔らかいテーマはファンのすそ野を広げる意味で無価値とは思いませんが、少なくともこの状況のなかで公式コンテンツとしてやることではないでしょう。本来ならばそういった国民の空気感を意識しつつ、施策に目を光らせなければならない山下会長本人も『私が井上対篠原の解説をやるんですよ』と嬉しそうに話していて、『大丈夫かな……』と思いました」(前出・スポーツ紙記者)

2000年シドニー五輪では判定を巡って激しく抗議する一幕も ©JMPA

 では、なぜこのような“珍策”が批判もなく出てきてしまうのか。

「結局、JOCの中枢はアスリート委員会も含めてスポーツ経験者が多いんです。そういった人たちにとってモスクワ五輪を経てロス五輪で金メダルを獲った山下さんは本当に偉大な存在。実際に『あのひとは神様だから』と口に出して言う人もいる。だからこそ、その“神様”に『汚れ役』はやらせられないという忖度があるんです。今回の瀬戸君のスキャンダルに関しても、悪者になりうる厳しい言葉は言わせられないし、山下さんが乗り気になっているゲーム施策も止めることができないという状況があるんです」(同前)

ロス五輪では金メダルを獲得した‟神様” ©JMPA

 なんとも悲しい「裸の王様」なのである。

 東京五輪まで、あと300日を切った。苦難が続くこの厳しい状況を、“神様”はどんなふうに打開していくのだろうか。