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新大久保にネパール料理店、なぜ30軒も?「ネパール街」を生んだ男の思い

2020/12/11
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「ネパール料理ではやっていけないよ」と言われたけれど

「ネパール人が手掛けるレストランは各地にたくさんありますが、ナンやインドカレー、タンドリーチキンといったインド料理をメインに出しています。日本人になじみのないネパール料理を出しては、お店としてやっていけないと考えるからです。だからネパール人には心配されました。

 でも私は食材店でモモを振る舞っていた頃から、もし料理屋をやるのなら、あれだけ同胞に喜んでもらえたネパール料理を出そうと考えていました。もし日本人の口に合わなくても、ネパール人がそれなりにいるからなんとかなるかなと。

 ただ口には合わなくとも、日本人に『ネパール料理とは、こういうものなんですよ』と見てもらいたい気持ちもありました。そこで全くアレンジしない純粋なネパール料理を出すことにしたのです」

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 ネパール人が運営するインド料理店、いわゆる「インド・ネパール料理店(インネパ店)」ではなく、日本では稀なネパール料理専門店が生まれた瞬間だった。ネパール料理だけで勝負しようと、インネパ店にはほぼ必ずあるタンドール(ナンやタンドリーチキンを焼くインドの土釜)も置かなかった。

『モモ』の看板。「日本初・本格ネパール料理の店」の文字がある。(筆者提供)

 ただ、前例がないだけに、苦労も少なくなかったという。とりわけ大変だったのが、メニュー開発だった。

「ネパール料理にはモモ以外にも、サデコ(和えもの)やセクワ(串焼き)などいろいろな料理がありますが、作り方がわからなかったんです。

 実はネパール人はたとえシェフであっても、ネパール料理をきちんと作れない人が少なくありません。家庭で息子はお母さんから料理を習わないことが多いし、ネパール人シェフはネパール料理ではなくインド料理を学ぶことが多いからです。

ギミレさん

 とはいえ舌では味を覚えていますので、ネパール人シェフに協力してもらいながら、食べては改良し、食べては改良し、というのを繰り返してメニューを作り上げました」