昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

カレー界の“巨人”の新商品、ココイチのスパイスカレーを南インド料理店主が本気で食べてみた

2020/10/26

「スパイスカレーブーム」と言われる昨今、ブームの主役であるスパイスカレー店は、そのほとんどが小規模な個人店です。店主一人で切り盛りするいわゆる「ワンオペ」のお店も珍しくありません。

 バーなどの夜しか営業しない店舗を昼だけ借りて営業する「間借り」の形態を取る店も多く、とにかくコンパクトで趣味性の強いお店とそこに対して仲間意識を持って集うファン、という構図がこのブームの基本になっているようです。

 つまり、大手のチェーン飲食店とは真逆の存在……のはずなのですが、その大手チェーン店が昨年、今年と続けて「スパイスカレー」と銘打った商品を期間限定でリリースし、ちょっとした話題となりました。その大手チェーンとは、言わずと知れたCoCo壱番屋です。

CoCo壱番屋の看板 ©時事通信社

店舗数で“一強” カレー業界のガリバーことココイチ

 カレー業界においては、昔からCoCo壱番屋がその店舗数において他の追随を許さない一強時代が長く続いています。そんなカレー業界のガリバーであるココイチが初めて「スパイスカレー」という名称を使用したのが2019年の「大人のスパイスカレー THE チキベジ」でした。

 そして今年2020年にも、昨年とはまた異なるバージョンでスパイスカレーがリリースされています。今回は、「スパイスカレー THE エスニックアジア」という、前回とはまた全く違う新機軸の商品のようです。気になるのでさっそく食べに行ってきました。

©文藝春秋

 注文から程なくして目の前に運ばれてきたそれは、当然ですがビジュアルもいつものココイチのカレーとは随分趣が異なります。

 主役の小海老と煮込まれて繊維状になった鶏肉がふんだんに使われ、更にインゲンにたけのこ、そして皿の端には鮮やかな赤玉ねぎのピクルス、と鮮やかで立体的な見た目はなるほど確かに今時のスパイスカレーを彷彿させるものがあります。

©文藝春秋

安定感がありながら、最新のトレンドもばっちり

 そして見た目以上に特徴的なのはそこから立ち昇る香り。メニューの商品説明に「柑橘ハーブソースがアクセント」とあるように、柑橘系の爽やかな香りが第一印象です。タイ料理にもよく使われるバイマックルーとレモングラスでしょうか。しかしその奥からは同時に「いつものココイチ」の慣れ親しんだ香りも追いかけてきて、ある種の安心感・安定感を与えてくれます。

©文藝春秋

 実際に食べ始めてすぐに感じるのはほのかな酸味。普段のココイチのカレーには無い要素ですね。海老・タイ風のハーブ・酸味、と来て、なるほどこれはタイ料理の「トムヤムクン」をモチーフにしたものかと合点がいきました。

 最近のスパイスカレーの世界では、麻婆豆腐やルーロー飯など、日本人にそれなりに親しまれていつつエキゾチックな印象を与える料理とカレーを融合させるという手法が取られることがよくあり、そのトレンドを捉えたものとしても解釈できそうです。