文春オンライン

カレー界の“巨人”の新商品、ココイチのスパイスカレーを南インド料理店主が本気で食べてみた

2020/10/26
note

 昨年リリースされたココイチ流スパイスカレーの第一弾であった「THE チキベジ」は、もっと主流のスパイスカレーに寄せたものでした。名前の通り鶏肉と野菜を主役に、最近のスパイスカレーにおいて特徴的なクミン・カルダモン・カスリメティといったスパイスを立たせたもの。初年は王道に寄せ、次の年には独自性をアピール、という周到な商品展開が興味深いです。

大手チェーンの制約が、独自性となる

 いずれのスパイスカレーも、従来のオーソドックスな「カレーライス」とは、はっきり異なる特徴を打ち出した物だったという事は言えると思います。ですがその特徴の打ち出し方の強度はやや控えめでもあります。

 今回の「エスニックアジア」に関しても特徴的なハーブの香りはあくまでアクセント程度にとどめ、酸味といってもトムヤムクンのようにはっきりと酸っぱいわけではありません。あくまでベースとなる「ココイチのカレー」的な味わいを引き立てつつ新鮮な印象をプラスしているという印象。

ADVERTISEMENT

©文藝春秋

 個人店のスパイスカレーがある意味やや過剰なスパイス感や辛さ、食材の突飛な組み合わせではっきりとした特徴を打ち出す形でしのぎを削る中、大規模チェーン店であるがゆえにある程度万人受けする味であることも求められるココイチには制約もあるということでしょう。

 ただし見方によってはその制約ゆえに、スパイスカレーブームとは一定の距離を取った普遍的なおいしさを提供し続けるという、逆の意味で独自性のある路線を取っているのがココイチである、という事も言えるかも知れません。

次はこんなことに挑戦してほしい! ココイチへのリクエスト

 そんなココイチが今後どのような新しい「スパイスカレー」をリリースしていくのかが楽しみです。個人的にはぜひ「合いがけ」に挑戦してほしい。スパイスカレーの世界では、一皿に複数のカレーや副菜を賑やかに盛り込んだスタイルももはや普通というより主流にすらなっています。

©iStock.com

 これもやはりチェーン店的なオペレーション上の制約はありそうですが、ココイチなら2種類のカレーをライスの両側に分けて盛るだけで充分な話題性を獲得できそうな気がします。

 その場合2種類のカレーのうちひとつは「いつものココイチのカレー」で良いのです。そのかわりもう片方のカレーは思い切って「万人受け」の範疇を超えたところまで個性的にチューニングする。それを交互に食べ進めるのはいかにも楽しそうです。

 なおかつスパイスに慣れていない一般層も、これなら安心感を持ってチャレンジしやすいでしょうし、なんなら2種類のカレーをお皿の上で混ぜてしまえば、これまでのココイチ流スパイスカレー同様突出しすぎないバランスの味わいでも楽しめる。更に言えば「いつものココイチカレー」部分がある事で、そこにはカツなどのトッピングもやりやすくなる。

 ……単なる個人的な妄想ではありますが、なんだかいい事ずくめな気もしています。