ハッキリさせておきたかった二人の涙の違い
さてこの二人の涙をどう感じただろう。どちらも連敗を止めるためにマウンドに登ったピッチャーに変わりはないのだが、もしこの涙に対する気持ちを同じ温度で藤平投手にぶつけるファンがいるとすればちょっと待ってほしい。もちろん高卒新人ながらここまで5試合に登板し2勝3敗で防御率2.54の素晴らしい成績である。9月5日のピッチング、あの1勝は白星5つぐらいの価値はある。しかし、高卒新人のかわいいかわいいルーキーなのだ。後半の連敗を止めたことで知らぬ間に大エースと同じ荷物を背負わせるのは酷な話である。
もちろん同じに考えている人はほとんどいないとは思うが、則本投手はチームの現状を背負った上での涙、藤平投手は悔し涙。それでいい。ここでハッキリさせておきたかった。彼にはこれからもガンガン腕ふって一軍の超一流バッターに正面から向かっていってほしい。打たれたら打たれたで勉強していけば充分。その彼すらもエースが、そしてチームが背負ってくれるだろう。
18日のマリーンズ戦、9回見事3点差を大逆転でサヨナラ勝ちできた事も嬉しかったが、それと同じくらい、いやそれ以上に、則本投手が与田ピッチングコーチから告げられた8回での交代を「嫌です」と断り、9回を投げきった事に心が震えた。どんな状況でも最後まであきらめずに最善をつくしてくれるエースがいる。未来のその場所を目指す新人投手がいる。いい時季にチームが成長しているように思う。今シーズンまだまだこっからですっ。
◆ ◆ ◆
※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/4230 でHITボタンを押してください。