在日ベトナム人のうち技能実習生の数は?
日本人はベトナム人と見れば全員が「虐げられている技能実習生」と考えがちだが、実際のところ在日ベトナム人41.2万人のうち技能実習生はおよそ22万人。クィさんたち留学生が8万人で、タオさんのように日本で就職して働く人が5万人、その配偶者として滞在する人が2000人で、永住権を持つ人も1万7000人いる(法務省による。2019年末の統計)。
ベトナム人といってもいろいろな人がおり「犯罪をする人と一緒にしないで」という声があるのも当然だろう。
たとえば都内のコンビニや居酒屋でアルバイトをしているベトナム人は、そのほとんどが留学生だ。彼らはベトナムでも都市部出身で、どちらかといえば中間層の子息が中心だ。「日本の文化やビジネススキルを吸収して、成功したい」と明確なビジョンを持っていて、日本語もよく学び、日本社会に適応しようと躍起だ。日本人の友人も多い。おもに東京などの大都市に住む。日本のマナーや法律はわかっており、犯罪に手を染めるケースは少ない。
彼らからすると、技能実習生たちは遠い存在だ。ベトナムでの生まれ育った環境もまったく違う。
実習生として日本にやってくるベトナム人の大半は農村部出身だ。貧しい家庭に育った人も多く、知識や学力に乏しいこともある。だから安易に借金を背負い、あまり深く考えずに技能実習生として日本に送り込まれてくるのだが、彼らが働くのは地方の農村や漁村、工場などだ。言葉を必要としない単純労働に従事しており、日本語能力は低い。だからどうしてもベトナム人実習生同士の閉じたコミュニティに引きこもりがちだ。
そんなある種の純朴さを狙って、もっと稼ぎたくないかと不法な仕事を持ちかけるベトナム人、日本人もいる。もちろん22万人にも及ぶ技能実習生のほとんどはまじめに(そして搾取を耐え忍び)、働いている。ただ付けこまれやすい立場であることは確かだ。
留学生・社会人と、技能実習生。同じ日本に住むベトナム人でも、両者はあまり混じり合うことがない。ベトナムでの階層の違いがそのまま日本に持ち込まれており、交流もわずかだ。
そこを埋めていこう、知識や日本社会との接点の少ない実習生に、留学生や社会人が情報を伝えて、犯罪を防ぐ一助にしていこうという動きも、在日ベトナム人の間で出てきている。