「求人票に“ベトナム人以外”とはっきり書かれているのを見たときはびっくりしました」
そう語るのは、都内で建設会社に勤務するベトナム人タオ・ムオイさん(27)。同じように日本で働く友人が転職活動をしているのだが、「ベトナム人お断り」の案件が多く、困っているのだという。
言うまでもなく、日本でベトナム人による犯罪が相次いでいることに対する動きだ。国籍を制限して求人することは、職業安定法など労働関連法令によって禁じられてはいるのだが、実際はベトナム人の応募を受けつけない企業が増えているという。
仕事も住む部屋も見つからない
「留学生たちも、アルバイトを見つけるのが難しくなっています」
ベトナム人留学生の中には、飲食やコンビニなどの現場でアルバイトをして生活費を稼ぐ「苦学生」もたくさんいるのだが、なかなか働き先が見つからない人も出てきているという。
「コロナ禍もあるし、卒業してもベトナム人を受け入れてくれる会社はあるのか、心配しています」
都内の大学に通う大学3年生、ミン・クィさん(24)も言う。
「アパートも同じです。ベトナム人が借りにくくなっています」
「外国人でも借りられますか」と問い合わせて「大丈夫ですよ」と答えた不動産屋に国籍を伝えると、態度が一変。「すみません、ベトナム人は難しいです」とあしらわれてしまうのだ。
「私がベトナム人だとわかったとたんに冷たくなる日本人もいます。悲しくなります」
タオさんは声を落とす。
こうして日本社会から「拒絶」されるベトナム人のほぼすべては、犯罪と何の関わりもなく暮らしてきた人たちだ。
「犯罪については、同じベトナム人として許せないし、がっかりしています。日本人が怒るのもよくわかります。でも、すべてのベトナム人が悪いと思わないで」
と、ふたりは口をそろえる。