ベトナム人による犯罪が相次いでいる。その背景だと語られるのは彼らの労働環境の劣悪さだ。しかしもうひとつ、実習生を送り出してくるベトナム現地機関にも悪質なものが多いことはあまり知られていない。ベトナム人経営の送り出し機関が、同じベトナム人を搾取し、そこに日本人が寄生しているという図式があるのだ。
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「まず一度、ベトナムに行ってみませんか?」
人手不足に悩む地方の中小零細企業、とくに建設関連の会社を回っているブローカーは、まずこう切り出すという。
「技能実習生の候補生たちが日本語を学んでいる現場を見てから、彼らを雇うかどうか決めてはいかがでしょう。もちろん渡航費用はこちらでお出しします」
そう誘われて、企業の担当者はそれまで縁もなかったベトナムに向かうことになる。同行するのは営業をかけてきた「紹介会社」などと称する日本人ブローカー、それに地域にある実習生受け入れの組合(監理団体)の日本人担当者だ。
監理団体は英語でいうとアクセプト・オーガナイザー、つまり受け入れ機関だ。この団体が、ベトナム側にあるセンド・オーガナイザー、つまり送り出し機関を通じて、技能実習生を受け入れ、各企業が雇う。送り出し機関はベトナム人の経営だ。
技能実習制度は「海外の送り出し」と「日本の受け入れ」双方があって成り立つものなのだが、そこに悪質なブローカーが寄生していることがベトナムの場合、非常に多い。
そんなブローカーの営業を受けて実習生の導入を検討し始めた企業の担当者は、ベトナムに到着すると、流暢に日本語を話す送り出し機関のベトナム人に出迎えられる。クルマはたいてい、アルファードかヴェルファイア。まず向かうのは「日本語センター」などと呼ばれる学校だ。送り出し機関はたいてい日本語学校を兼ねているが、やはり悪質なところもかなり混じっているという。