昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/11/22

失踪、犯罪へと追い込む仕組み

 ベトナム人実習生を受け入れた担当者は、はじめの1か月ほどは彼らの真面目な働きぶりに安心して、胸をなでおろすのだ。

 ところが、2か月目には休みがちになる。無断欠勤が目立つようになる。3か月も経つとそれが常態化し、パチンコを覚えて入り浸る者も出てくる。やがて寮の部屋はもぬけの殻となり、失踪してしまう。典型的なパターンだが、実習生は担当者の陰で送り出し機関の金利がどれほどにきついものか、日本で働き返済を始めてようやく気がつき、絶望するのだ。

 もちろん日本側の企業が、残業代の不払いや寮費のピンハネなどあの手この手で最低賃金の実習生を食い物にしている実態もあるのだが、加えて送り出し機関の金利が彼らを圧迫する。これはちょっと返せないと感じ、無気力になり、労働意欲を失う。逃亡する。

ベトナム北部の農村。実習生の多くはこうした地方の出身だ

 焦った担当者は送り出し機関の窓口ともなっているブローカーに連絡をするが、親切だった態度は一変し、

「うちは500円しかもらってないんですよ。それでどうしろって言うんですか。それより、まだまだ生徒はいますから、次の入れましょうよ。何人ですか」

 とあしらわれるのだ。それならこちらは組合や警察、入管にも相談をすると返すと、スマホに送られてくるのは、あのとき一夜をともにしたベトナム女性との密会の様子、いわゆる「ハメ撮り」の写真だ。

 愕然とした担当者は、社長や組合、入管に頭を下げ、自分の管理不行き届きだと謝罪し、話はうやむやとなり、もうベトナム人は懲り懲りだ、となる。ブローカーや送り出し機関に累が及ぶことはない。

「それでもまた別のブローカーがこういう会社を訪れます。そしてまたベトナムに視察に行き、同じことを繰り返す人も多いのです」(Tさん)

借金を背負った実習生のリストが出回っている

 実習生たちは、あてもなく逃げるわけではない。

 日本で知り合ったベトナム人や、同じ元実習生に誘われて、さまざまな仕事に就いていく。在留カードを偽造して、ベトナム人経営の会社に潜り込んでいるケースもあるし、いま問題になっているように窃盗団や薬物売買の組織に取り込まれることもある。