2023年下半期(7月~12月)にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2023年7月12日)
長距離トラックドライバーの労働環境は、なぜ改善されないのか。元トラックドライバーの橋本愛喜さんは「かつては『ブルーカラーの花形職』と呼ばれ、トラックや運転が好きな人たちがこぞってドライバーになった。『稼げない仕事』に変わったいまでも、そうしたドライバーが業界を支えているが、荷主たちはそうした運転手たちの『好き』に甘えている」という。橋本さんの新著『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』(KADOKAWA)からお送りする――。
トラックドライバーは「ブルーカラーの花形職」だった
あまり「何年前こういうことがあった」的な言い方を連発すると年齢がバレるのでアレなんやが、バブルのころ、こんな決め台詞が話題になったCMがあった。
「24時間戦えますか」
スーツ姿の男性たちが歌いながらそう問いかける栄養ドリンクのCMだ。
今そんなこと言ってみろ。秒で「パワハラだ」と訴えられる。
過労死や自死などが起きたことで、日本では「働き方」を見直す機運が高まり、2019年に働き方改革法が施行されるに至った。しかし実のところ、2024年から始まるトラックドライバーたちの働き方改革施行は、当事者である彼らからはすごい勢いで歓迎されていない。
自分たちの労働時間が減り、休みが増えればゆっくり体を休められるしやりたいこともできるのに、現場からは「誰の許可得て労働時間減らしとんじゃ国は」という憤りの声が聞こえる。
このCMが流れていたころ、トラックドライバーという職業はブルーカラーの花形だった。某大手運送会社で3年走れば家が建ち、5年走れば墓が建つなんて言われ方もしていた。墓が建つくらいだ。過酷ではあったが、しっかり稼げたのでドライバーになろうとする人も多かったのだ。