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私も小さいころからトラックを運転する父の姿を助手席から見てきたが、それがあったからトラックに乗る際に全く抵抗がなかったんだと思う。

「うちは父親が4tに乗っていました。自分は生後1カ月でトラックデビュー。その後の人生はトラックドライバー以外考えられず。父親は70過ぎですがまだ現役で乗ってます」
「18歳で普通免許取得から乗務して今年で37年目。何度かやめましたけどやっぱり戻って来ました。自分の亡き親父の影響が一番だと思います。小さい時からトラックの助手席に乗り親父が憧れだった」
「父親が運送業を経営しています。いずれは継ぐ予定でトラックに乗っています。跡継ぎだからというのもありますが、それ以上にやっぱり父のようなトラック乗りになりたいという憧れが強いです」

運転手たちにはスーパーヒーローがいる

③「菅原文太に憧れて」

そして「親の背中を見て」という答えと同じくらい、いや、それ以上に多く聞かれるのがこれだ。

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この記事を読む人のなかに『トラック野郎』を知っている人がどのくらいいるだろう。

現役のトラックドライバーの『トラック野郎』認知率は、間違いなく100%で、彼らの「菅原文太」と「愛川欽也」に対する情熱は半端ない。

「保育園の時に『トラック野郎』シリーズを見て影響されたのが始まり」
「菅原文太&愛川欽也の名コンビは不滅です。今は亡き名優揃いの映画でした」
「『困った時はお互い様』というのは桃次郎さんから教えてもらった」

率直に言うと、この映画がテレビで放送されていた当時と現在の「運転」に対するコンプライアンスには雲泥の差があり、アレを真似すればものの数秒でどこからともなくサイレンが聞こえてくる。なんなら規則を守っているシーンのほうがむしろ少ないくらいだ。

しかし、あの映画には、まっすぐに生きるドライバーの人情や強い精神が映し出されており、それが彼らにはハマったんだろう。菅原文太と愛川欽也がスーパーヒーローだとする人が多い。

今の物流はもはやこの2人によって支えられていると言っても過言ではないのかもしれない(いや絶対過言だ)。

橋本 愛喜(はしもと・あいき)
フリーライター
元工場経営者、トラックドライバー、日本語教師。ブルーカラーの労働環境、災害対策、文化祭、ジェンダー、差別などに関する社会問題を中心に執筆や講演を行う。