規制緩和で長時間労働、低賃金の職種に変貌した
そんな運送業界に異変が起きた事件がある。1990年の「規制緩和」だ。
これまで4万5000社程度だった運送業者が6万3000社にまで激増。その結果、競合他社で荷物の奪い合いが起き、運賃の値下げはもちろん、「うちはこんなサービスもしまっせ」といって、荷主のもとで検品、仕分け、棚入れ、棚卸し、陳列などの附帯作業をドライバーが無料でさせられるようになった。
さらに、条件やスケジュールの関係で自社で運べない荷物を同業に流す行為が横行。見事なまでの多重下請構造が出来上がり、ピンハネに次ぐピンハネによって、実運送企業(最終的に実際荷物を運ぶ企業)は、走っても赤字になるが次の仕事に繋げるために断れないケースまで発生する始末。
さらにそこに休憩・休息期間遵守の徹底や、「安全運行のため」「トラックドライバーのため」と言いながら、現場を知らない人たちがつくった(悪気はなくも)誰の得にもならないような明後日なルールによって、現場がより走れなく、稼げなくなっていったのである。
こうして「ブルーカラーの花形職」は、長時間労働はそのままに、他産業よりも賃金が安い職種へと変貌を遂げたわけである。
なぜ「歴30年」のベテラン運転手が多いのか
現場のトラックドライバーに取材し続けてつくづく感じるのは、20~30代のドライバーが極端に少なく、50代以上の「この道30年」といったベテラントラックドライバーたちが非常に多いことだ。実際、大型トラックドライバーの平均年齢は50歳。他産業より6歳ほど高い。
これが意味するところが分かるだろうか。
現在50代以上のベテランドライバーが働き始めたのが、まさに1990年前後。彼らの多くは、この業界に「稼ぎたくて入ってきた」人たちが多いのだ。
彼らが若かりしころに、まさに「24時間働けますか」なる言葉が流行り、それに「はい、働けます」とした人たちがトラックドライバーになったのである。